理研、ゴカイが持つ無限の再生能力の仕組みを解明

理化学研究所発生・再生科学総合研究センター形態形成シグナル研究グループ研究員の丹羽尚氏(現 客員研究員)、テクニカルスタッフの秋元愛氏(現 自然科学研究機構基礎生物学研究所 IBBP センター)、グループディレクターの林茂生氏と、ゲノム資源解析ユニットの工樂樹洋ユニットリーダー、および筑波大学大学院 生命環境科学研究科研究員の佐久間将氏らによる共同研究グループは、環形動物ゴカイの体節形成を詳細に観察し、新たな体節は隣の体節からのタンパク質が増殖のシグナルとなって作られることを発見した。成体になった後でも既存の体節を鋳型にして新たな体節を作る(増節)仕組みは、ゴカイの無限の再生能力を説明する手がかりとなる。

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魚釣りの餌として用いられる環形動物のゴカイは、胴部の後端に体節を繰り返し付加し続けることで成長し、体節数は120~130にも達する。ゴカイは尾部を切断されると、傷を修復して体節形成の再生を加速させ、その再生能力は実質上無限と考えられている。

一方、体節の繰り返し構造を持つ他の動物(脊椎動物、節足動物)では、例えばバッタが腹部に11個の体節を持つ、というように体節の数は決まっている。これらの動物では、発生過程で胚が伸長する最先端部に細胞の増殖領域が生まれ、そこから体節の細胞が供給される。しかし、発生過程が終了すると増殖領域は失われるため、イモリのしっぽなど一部の例外を除き、成体の体節再生能力には限界がある。

共同研究グループは、ゴカイが持つ強力な再生能力の謎を探るため、尾部を切断されたイソゴカイが増節する様子を詳しく観察。その結果、傷が修復して尾部が付加された後、尾部の直前、すなわち切断された体節の尾側に細胞の増殖領域が出現し、細胞は列をなして順序よく追加され、5列並ぶと1つの体節の原型が完成することが分かった。この増殖領域を制御するタンパク質は、既存の体節が発するWingless(Wg)であることも突き止めまた。

既存の体節に由来するシグナルが新たな体節の形成を促すという仕組みが、ゴカイの無限の体節再生能力を実現していると考えられる。

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