浜松ホトニクス,工業用デュアルエナジーX線CTを実現する独自のシンチレータ両面観察方式の基礎技術を開発

浜松ホトニクスは,世界で初めて工業用デュアルエナジーX線CTを実現する,同社独自のシンチレータ両面観察方式(DSSD)の基礎技術を開発した。今後,国内外のX線CTメーカに向けてライセンス販売やユニットエンジンとして供給していく予定。

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この技術は,同社のX線源,高感度デジタルカメラ,シンチレータプレートの要素技術を組み合わせることで,世界で初めて開発した工業用デュアルエナジーX線CTの基礎技術。同社独自のシンチレータ両面観察方式は,高エネルギー画像と低エネルギー画像を1回の撮影で取得できるため,従来の工業用シングルエナジーX線CTでは取得不可能だった,特定の物質分別を1回のX線照射で実現することができるようになる。

さらに,この技術に基底物質分解手法を用いることにより,仮想単色X線画像を作成することが可能になる。その結果,取得された画像データに線質硬化異常画像(ビームハードニングアーチファクト)補正ができるため,高速かつ簡便にデュアルエナジーの効果が得られる。これにより,線質硬化異常画像の改善などを行なうことができ,形状認識や物質分別の精度向上が期待される。

また,シンチレータ,カメラ,光学倍率を容易に変更できるシンプルな構成となっているため,以下のようなカスタマイズが容易なうえ,低コストで自由度の高いX線CTシステムが構築可能となる。

既存のX線CTシステムは,
①検出器のサイズによって撮像対象のサイズが決まってしまう制約があり,さまざまな大きさに対応するには,複数の検出器を用意する必要がある。
②検査対象の物質に最適なシンチレータの大きさや種類,厚みを変えることが容易ではない。
③システムの解像度に自由度を持たせることは困難。
④検出器にX線を直接照射するため検出器自身が被曝のダメージを避けられず,検出器の交換が必要となってしまう。

などの制約があったが,今回開発したデュアルエナジーX線CTシステムはこれらの問題を低コストで克服することが可能となる。また,検出器(デジタルカメラ)をX線照射範囲外に設置できることや1回の照射で同時にデュアルエナジーデータを取得することにより被曝が軽減あるいは防止されるため,X線照射を直接受けるシンチレータの交換のみで,メンテナンスコストを軽減する。

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