東大、家庭用インクジェットプリンタを用いて様々な電子回路素子を短時間で印刷する技術を開発

東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻准教授の川原圭博氏は、英国マイクロソフトリサーチと米国ジョージア工科大学と共同で、一般的な家庭用のインクジェットプリンタと市販の銀ナノインク、紙、導電性接着材料を組み合わせ、独自の設計手法を確立することで、高精度のタッチセンサや通信用アンテナ、電子回路の配線を紙やPETフィルムといった柔軟な素材上に印刷することに成功した。

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従来利用されていた銀ナノ粒子インクは印刷後に加熱などの後処理が必要だったが、今回は三菱製紙が開発し市販している後処理が不要な化学焼結銀ナノ粒子インクを利用することで、大幅な時間短縮が可能になった。

家庭用のインクジェットプリンタを利用した場合、従来の製造法と比べて導電性や精度が犠牲になってしまうため、これまでこのインクはテスト用途に用いられるに限られていたが、今回インクや紙の特性解析と独自の設計方法を考案することにより、電子回路素子の配線だけでなく、高感度なタッチセンサや、水分センサ、通信用の高感度なアンテナなども作成可能であることが示された。ラミネートコーティングを施すことで、酸化を防いだり耐水性を持たせたりすることも可能。

これまでセンサやアンテナといった電子回路を構成する素子を製造するには高価な機器が必要で、手間と時間もかかることから、短期間に手軽に何度も試作を繰り返すことが難しいという問題があった。この手法では、従来の百分の一程度の価格の機器を使用し、従来の百分の一以下の1分程度の短い時間で高度な電子回路素子の作成が可能となる。今回の成果により、研究者やエンジニアがより手軽に柔軟な電子回路を製作できるようになるほか、電子工作愛好家やアーティストが手軽に回路の試作を繰り返すことができるようになる。

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