理研、葉緑体内部のダイナミックな構造変化を生きたまま観察

理化学研究所は、葉緑体を生きたまま観察できる技術を開発し、コケ植物の葉緑体内で起きる膜ダイナミクスの可視化に成功した。

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地球の環境と物質生産を支える植物の光合成反応は、植物細胞内にある葉緑体の中で行なわれている。これまでに電子顕微鏡を使って、葉緑体の中にチラコイド膜と呼ばれる脂質二重膜が存在し、そこに光合成に関わるタンパク質が多く存在していることが知られている。これらのタンパク質は、環境の変化に応じて互いに結合する相手を変えながら光合成反応の調節を行っていると言われているが、電子顕微鏡では生きたままの状態で葉緑体内部を観察することができないため、光合成に関わるタンパク質の動きや働きを捉えることはできなかった。

研究グループは、新たに開発したライブセルイメージング技術を用いて、葉緑体内部の膜ダイナミクスの観察に挑んだ。一般的な植物の葉緑体は、長径10μm以下と小さいため、内部観察は容易ではないが、抗生物質を投与すると細胞内に1つの巨大な葉緑体を形成するコケ植物の特徴を利用し、サイズの問題を解決した。

そして、クロロフィル色素の蛍光をコンピューター処理することによって、チラコイド膜が作る構造の識別に成功し、チラコイド膜の一部が活発に動いている様子の可視化に生きた細胞で初めて成功した。また、チラコイド膜の部分構造によって、動きの活発さや構造の安定性が異なることも明らかになった。

この研究成果は、光合成調節の分子メカニズムの解明に向けて、葉緑体の膜ダイナミクスの役割を示唆するとともに、今後の解析の重要な手立てを提供するもの。

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