京大ら,電子を測定できる放射光メスバウアー吸収分光法の測定システムを開発

京都大学原子炉実験所の研究グループと,イタリアにあるトリエステ放射光研究所,日本原子力研究開発機構,茨城大学,高輝度光科学研究センターらによる研究グループは,電子を測定できる放射光メスバウアー吸収分光法の測定システムを開発し,その測定効率を大きく高めることに成功した。

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放射光メスバウアー吸収分光法は,多様な元素に放射光を共鳴吸させて物質の性質を調べられる有力な方法。通常の分光法と異なり,電子の状態や化学状態を局所的に調べることが出来るため,磁石材料などの機能性材料のしくみを調べるために用いられている。

これまで,そのスペクトル測定のために核共鳴吸収の後に発生するX線を測定していたが,同時に発生する電子は有効活用されていなかった。研究グループは,核共鳴吸収に伴うX線と電子を同時に検出できる検出器を備えた装置を世界に先駆けて開発した。また,その装置と大型放射光施設SPring-8の大強度X線を用いて,YbB12に含まれる174Ybの放射光メスバウアースペクトルを測定することに成功した。

電子を検出する放射光メスバウアー分光装置を開発して測定効率を飛躍的に改善できれば,測定効率の不足により困難であったレアアース元素等を利用した応用研究に道が拓かれ,それらの元素でできた機能性材料の研究など,同手法の新しい応用分野の開拓に繋がる。

今回の成果により今後,さまざまな元素の放射光メスバウアー測定が可能になり,レアアース磁石などの磁石材料や錯体・触媒材料・エレクトロニクス材料といった機能性材料の研究に進展がもたらされることが期待される。

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