理研、足りない糖鎖を補う仕組みを解明

理化学研究所は、糖鎖を作る糖転移酵素「Fut8」を欠損させた細胞では、別の糖転移酵素を発現し、活性化させることで糖鎖を補う仕組みが働くことを発見した。

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細胞表面に存在する糖鎖は、細胞内で糖転移酵素によって作られ、タンパク質の品質管理や機能調節など、生体内で重要な役割を果たしている。しかし、糖鎖の機能に関しては不明な点も多くある。このため、糖転移酵素の遺伝子を欠損させ、目的の糖鎖の機能を解明する試みが多くの研究機関で行なわれてきた。

共同研究グループは、理化学研究所マックスプランク連携研究センターシステム糖鎖生物学研究グループグループディレクターの谷口直之氏らが以前酵素として分離精製し、さらにその遺伝子を同定した、糖転移酵素のFut8を欠損させると糖鎖構造にどのような変化が起こるのか調べた。

Fut8欠損マウスの胎児線維芽細胞(MEF細胞)や血清中の免疫グロブリンG1(IgG1)の糖鎖構造を調べたところ、糖の一種であるバイセクティングGlcNAcを含んだ糖鎖が増えていた。また、野生型に比べてバイセクティングGlcNAcを付加する糖転移酵素GnT-Ⅲの活性が8倍増加し、GnT-Ⅲの発現に関わるmRNA量も3倍増加していた。

この原因を解明するため、Fut8欠損MEF細胞の遺伝子の変化を調べたところ、同細胞内でシグナル伝達タンパク質であるWntのターゲット遺伝子が増加していること、また、遺伝子の転写を活性化させるβ-カテニンが蓄積していることが分かった。以上の結果から、Fut8が欠損した細胞では、GnT-Ⅲの発現がWnt/ β-カテニンを通して調節されるという一連のメカニズムが明らかになった。

今回の研究で、生物が糖転移酵素を欠損した場合、他の糖転移酵素を発現し、活性化させることで生命を維持させるという新たな仕組みを持っていることを示唆しており、これまでに明らかになっていない糖転移酵素の新機能解明に役立つと期待できる。

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