東大,脳の特定のシナプス活動を自在に操作できることを証明

東京大学大学院薬学系研究科教授の池谷裕二氏らの研究グループは,わずか15分のトレーニングで,脳内の特定の神経細胞間の接合部位(シナプス)で起きるシナプス活動(または発火活動)パターンを,自在に活性化(または不活性化)していることを発見した。これは,動物がシナプス単位で神経活動を自己制御できることを意味するもの。

4

さらに,うつ病を示すマウスでは,学習に伴う発火活動パターンを制御できない一方,抗うつ薬を投与するとシナプス活動の制御能が回復することから,神経活動の制御にはモチベーション(やる気)が重要であることも示した。

神経細胞のシナプス活動を自在に増加または減少できる現象が,どのような生物学的意義をもつかを明らかにするためには,さらなる研究が必要だが,認知症のように,海馬に依存した記憶に障害を示す病態では,今回のような学習を利用して正常な神経活動を増やすことが新たな治療戦略になる可能性がある。

またてんかんや統合失調症,うつ病などの病態には,学習を利用して海馬で観察される異常な神経活動を減らすことが,新たな治療戦略となる可能性もあり,今後の展開が期待される。

詳しくは東京大学プレスリリースへ。