理研など,SACLAを用いて真空に潜んだ未知の場を探索した結果を発表

理化学研究所 放射光科学総合研究センター・グループディレクターの矢橋牧名氏,東京大学 大学院理学系研究科・教授の浅井祥仁氏,東京大学 素粒子物理国際研究センター・助教の難波俊雄氏らの研究グループは,ヒッグス場以外にも宇宙のインフレーションを起こした場,宇宙の再加速を起こしている場など,真空に潜んだ未知のモノ(場)を,X線自由電子レーザー施設「SACLA」を用いて探索した結果を発表した(ニュースリリース)。

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真空に潜む未知の場を介しての光の散乱

細く集光したX線同士を衝突させた際に,未知の場がなければ,反応は何も起こらず,X線はただすれ違う。一方,未知の場などがあると,X線が散乱され方向やエネルギーが変わる。今回の実験では,そのような散乱された現象が発見されなかった。このことからX線領域での光子・光子散乱の断面積に対して1.7×10-24㎡より小さいことが分かった。

今回,未知の場を高い感度で探索することができたというが,それはシリコン単結晶から切り出した薄い2枚の刃を用いた衝突技術を開発したことよるとしている。また,X線を用いての探索は初めてで,SACLAの性能向上に伴い,将来的には25桁高い感度での探索が可能になるとしている。これまでSACLAは物質科学,生命科学の大きな成果をあげてきたが,素粒子・宇宙研究のような基礎物理学にも有用であることを示した。