基礎生物学研究所ら,メダカの色素細胞の多様性を生み出す仕組みを明らかに

基礎生物学研究所のおよび名古屋大学の研究グループはメダカを使い,黄色素細胞と白色素細胞がつくられる仕組みを明らかにした(プレスリリース)。ヒトを含めた哺乳類では黒色素細胞と呼ばれる色素細胞を一種類持つが,魚類では特に色素細胞の種類が多いことが知られており,黒色素細胞の他,黄色い色素を持つ黄色素細胞,白い白色素細胞,メタリックな光沢を持つ虹色素細胞などが存在し,鮮やかな体色や模様を作り出している。

野生のメダカは黒色素細胞が目立ち,黒っぽい色をしていることからクロメダカと呼ばれている。またヒメダカでは黒色素細胞のメラニン色素が失われており,黄色素細胞が目立つため黄色の体色に見える。さらに全ての色素細胞が失われると「透明メダカ」と呼ばれるメダカになる。今回,研究グループは,黄色素細胞と白色素細胞に注目して研究を行なった。

研究グループは,黄色素細胞と白色素細胞の両方が失われる変異体を解析し,その変異体ではpax7aという遺伝子が壊れていることを見つけた。このことから,黄色素細胞と白色素細胞をつくり出すためには,発生の初期の段階でpax7a遺伝子が必要ということがわかった。

また,黄色素細胞が無くなり白色素細胞が増える変異体を解析し,その変異体ではsox5という遺伝子が壊れていることを見つけた。そしてこのsox5遺伝子が黄色素細胞と白色素細胞を作り出す途中の過程で,どちらの色素細胞になるかを運命づける切り換えスイッチとして働いていることを明らかにした。

これらの成果により,すべての種類の色素細胞の元となる細胞(幹細胞)に,まずpax7a遺伝子が働くことで,細胞は黄色素細胞または白色素細胞のいずれかになることを運命づけられ,さらにこの細胞にsox5遺伝子が働くことで黄色素細胞がつくられ,sox5遺伝子が働かなかった細胞では白色素細胞がつくられる,という遺伝子作用の詳細な仕組みが明らかになった。

多くの脊椎動物は多様な色素細胞を用いることで様々な体色や模様を生み出す。このような体色や模様は性的パートナーの選択や捕食者からの隠蔽など動物の生存戦略に重要な役割を担っている。今回の研究は,色素細胞分化の機構から体色を介した個体間コミュニケーションとその生物学的意義など幅広い研究を展開する基盤となると考えられる。