産総研,さまざまな種類の太陽電池を直接接合できるスマートスタック技術を開発

産業技術総合研究所(産総研)は,さまざまな種類の太陽電池を自由自在に直接接合できるスマートスタック技術を開発した(ニュースリリース)。多接合太陽電池は,さまざまな波長の太陽光を有効に利用し超高効率化が可能な電池であるが,これまで製造コストが高く,人工衛星や集光型太陽電池などでしか採用されていなかった。

今回開発した技術は,複数の太陽電池セルの接合界面にパラジウム(Pd)ナノ粒子を配列し,電気的・光学的にほぼ損失無く接合することができる。まずPdナノ粒子を自己組織化により配列し,異種太陽電池を接合するにはまずブロック共重合体の相分離現象を利用し,ボトムセル上の接合界面にPdナノ粒子を配列導入する。

その後接合するトップセルをエピタキシャルリフトオフ(ELO)法により基板から分離し,加重接着法により接合する。トップセルを作成するための基板は再利用できるので,SiやCIGSなどの低価格基板に高効率III-V化合物太陽電池を安く接合できる。

短波長領域を吸収するガリウムヒ素(GaAs)系高効率化合物太陽電池と,長波長領域を吸収する安価なCIGSやシリコン(Si)を接合することが可能で,CIGS上にGaAsとガリウムインジウムリン(GaInP)太陽電池を接合した3接合太陽電池は,変換効率24.2%を実現した。

また格子定数が異なるため,結晶成長では接合できないGaAs基板とインジウムリン(InP)基板を用い,GaAs上にはGaInP(1.9eV)/GaAs(1.42eV)2接合セルを,InP基板上には,InGaAsP(1.05eV)/InGaAs(0.75eV)2接合セルを作製した。さらに,それぞれをスマートスタック接合して,GaInP/GaAs/InGaAsP/InGaAs 4接合太陽電池を作製したところ,変換効率30.4%を得た。

今回開発した技術によって試作した素子の信頼性試験では,温度サイクル試験(-40℃~+85℃)では200回経過後も劣化せず,加速劣化試験(150 ℃/100 hr)でも劣化は見られなかった。これらは60 ℃の場合で20年以上の安定性に相当し,実用的な温度耐性および長期信頼性が確認された。

今後は、本技術による多接合太陽電池の量産化が可能となるよう,大面積基板でのELO技術,III-V化合物半導体トップセル作製の低コスト化,GaAs基板再利用技術の研究開発を進め,発電効率40%以上を目指す。集光発電施設や宇宙用太陽電池だけではなく,一般発電用にも利用できるよう,低コスト化と高効率化の研究を進めるとしている。

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