東大,認知症に関わるタンパク質の遺伝子機能を解明

東京大学は,発生生物学や神経科学において広く用いられるモデル生物の一つである,線虫C. エレガンスを用いた実験により,線虫においてもインスリン受容体にはアミノ酸の数が異なる2種類のタイプが存在することを明らかにした(ニュースリリース)。

また,このうち大きいタイプが,カルシンテニンが関与する輸送系により神経細胞内でシナプス領域へ運ばれることが,飢餓経験と環境情報(場所の塩濃度)を結びつける学習に必要であることを見出した。

このカルシンテニンと呼ばれるタンパク質は,アルツハイマー病やレビー小体型認知症,パーキンソン病といった神経疾患に関与することが示唆されている。

また,カルシンテニンの遺伝子に存在する個人差(一塩基多型)は記憶能力と相関することが報告されている。しかし,カルシンテニンがどのような機能を持っているのかについては不明だった。

今回の発見は,体内の血糖値を下げることで知られているインスリンが,多様な機能を発揮するメカニズム,さらに記憶・学習や認知症に関わるカルシンテニンが神経細胞内でどのように働くかを明らかにするもの。

研究グループは今後の研究の進展により,今回の成果が認知症の治療や記憶・学習能力の向上に役立つことが期待されるとしている。

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