東大ら,細胞に「食べる」機能を付与することに成功

東京大学,ジョンズホプキンス大学らは,薬によって細胞同士の相互作用を制御する新たな仕組みを確立し,これによって,本来ほかの細胞を「食べる」能力を持たない細胞にこの機能を付与できることを明らかにした(ニュースリリース)。

貪食(どんしょく)細胞と呼ばれる細胞は,体内に侵入した異物や死細胞を「食べる」能力を持ち,生体防御機構の一翼を担っている。貪食細胞だけが持つ,この「食べる」機能は「ファゴサイトーシス」と呼ばれている。

ファゴサイトーシス開始の鍵は,食べるべき対象に,細胞の表面にある各種分子を使って接着することで,これまでに接着分子がいくつか特定されている。

研究グループは,どの分子を発現させた時にファゴサイトーシスが起こるのか確かめるためのツールとして,ゴルジ体に留まるたんぱく質(滞在型たんぱく質)と,細胞外膜に輸送されるたんぱく質(輸送型たんぱく質)を結合させて輸送効率を調べる「DISplay(ディスプレイ)」法を開発した。

この手法では,従来法では困難だった,分単位での細胞表面の発現分子の制御が可能。さらにこの手法を用いることで,ファゴサイトーシス活性が低い細胞にも「食べ」させることができると分かった。

この研究手法は,ファゴサイトーシスの分子機構を解明できるだけでなく,細胞同士の相互作用が鍵となるさまざまな生命現象(受精,神経網形成,血管形成,創傷治癒,免疫反応など)についての研究にも応用でき,複雑な分子経路の解明や制御を行う際に大いに役立つものと考えられるとしている。