産総研ら,平面度λ/100の超高精度平面ガラス基板を開発

産業技術総合研究所(産総研)は,テクニカルと共同で,平面度 λ/100(約6.3 nm:関東平野の広さに対して5 mm程度の凹凸に相当)の超高精度平面ガラス基板を開発した(ニュースリリース)。

半導体やフラットパネルディスプレー用露光装置のマスク基板や反射鏡,また,次世代の半導体露光装置(EUV)での高精度マスク基板など,ナノメートルレベルの高精度な平面基板が求められている。またシリコンウエハの平坦度測定装置など,ナノメートルレベルの凹凸を測定する装置にも,測定の基準となる高精度な平面基板が必要となっている。

平面基板を作製するには,基板表面の研磨技術と測定(評価)技術が必要となるが,これまでλ/100レベルの超高精度平面基板は測定・評価技術がなかった。

産総研は,フィゾー干渉計を用いた世界最高精度の平面度を標準供給してきたが,新たな測定技術の開発にも取り組んでいる。一方,テクニカルは独自の研磨技術をもっているが,研磨した平面を高精度で評価することは難しかったため,今回両者の研磨技術を組み合わせることで,超高精度な平面基板の実現を目指した。

今回,物体表面の局所的な角度の分布を,オートコリメータにより測定し,得られた角度分布を積分することで物体表面の平面形状(凹凸)を求めた。この手法は,フィゾー干渉計のように基準となる平面を必要とせず,角度測定の精度のみによって平面度の測定精度が決まる。

開発した超高精度平面度測定装置(SDP)は,市販のオートコリメータを角度測定装置として用い,そこから出射される角度測定用の光ビームを,ペンタゴンミラーを介して測定試料表面に当てる。ペンタゴンミラーを移動させて試料表面上で光ビームの当たる位置を走査し,反射光ビームの位置から,局所的な角度分布を測定する。

今回開発した装置は測定原理と装置構成が非常にシンプルだが,平面度測定の再現性として,口径300 mmに対し±1 nm以下という非常に高い精度を達成した。さらに,SDPを利用すると重力たわみの高精度な評価ができるため,既存の平面度国家標準機あるフィゾー干渉計でもλ/100を超える測定精度が実現可能となった。

テクニカルは,産総研による平面形状の評価結果をもとに,超高精度平面ガラス基板を研磨すると共に,保持機構も開発した。他の装置に組み込める状態でも研磨時の平面度が損なわれず,λ/100の平面度を達成した(直径100 mm:有効径90%)。製造工程における平面度の測定・評価精度が向上したことで,平面鏡やプリズムといった光学部品をこれまでにない加工精度で提供することが可能となった。

テクニカルは,今回開発した超高精度平面基板を基準平面板として組み込んだフィゾー干渉計を用い,光学部品の高精度化・高信頼性化を図るとともに,今後は,さらに大型の超高精度平面基板(直径150 mm)の開発に取り組む。産総研では,今秋頃を目途に今回開発した超高精度平面度測定装置を用いて平面度の校正サービスを開始する。

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