原研,核融合炉に必要な出力を長時間維持できるプラズマ加熱用マイクロ波源を開発

日本原子力研究開発機構(原研)は,核融合炉において燃料プラズマを加熱するための高出力マイクロ波源「ジャイロトロン」の研究開発を進めてきたが,今回,2つの周波数が選択的に出力可能なジャイロトロンを新たに開発し,核融合炉で必要となる1000キロワットの高出力を100秒以上の長時間にわたり維持することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

この成果により,核融合炉を高性能化するために必要な,加熱位置可変式マイクロ波加熱装置の実現に向けて大きく前進した。

核融合炉において燃料プラズマを数億度にまで加熱する方式として,強力なマイクロ波を入射する方式がある。このマイクロ波の周波数を変えて,加熱する位置を制御することで,炉の性能を向上させることができる。

ジャイロトロンでは,電子を強磁場中で加速し,その回転エネルギーをマイクロ波に変換して出力するが,出力されないエネルギーは損失としてジャイロトロン内部の機器を加熱して,長時間高出力の妨げとなる。そのため,従来は出力されるマイクロ波の周波数を1つに絞って損失を低減するのが一般的であり,共通の設計により複数の周波数を得ることは困難だった。

今回,原研では「3極型電子銃」を用いて周波数ごとに電子ビームの特性を変えることで,2つの周波数(110と138ギガヘルツ)の両方に対して低損失が実現できることに着目し,ジャイロトロンを設計・製作した。その結果,2つの周波数で1000キロワットの出力を,ジャイロトロン各部の温度が安定する100秒以上の長時間にわたり維持することに世界で初めて成功した。

今回開発した2周波数ジャイロトロンは,現在,日欧共同で茨城県那珂市に建設中の超伝導トカマク型核融合実験装置JT-60SAにおいて使用する予定であり,出力マイクロ波の周波数を切替えできる特長を生かして,実験装置の高性能化を目指す。原研は今後,2周波数ジャイロトロンをさらに発展させて,加熱位置可変式マイクロ波加熱装置を実現することにより,核融合炉の高性能化に貢献するとしている。

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