阪大,クロスカップリング反応による材料の直接的な接着を実現

大阪大学は,鈴木・宮浦クロスカップリング反応を利用した共有結合形成による材料の接着を実現した(ニュースリリース)。

研究グループは,フェニルボロン酸を有する高分子ヒドロゲル(PB-gel(x))とヨウ素を有するヒドロゲル(I-gel(x)),また,リファレンスとしてフェニルボロン酸もヨウ素も有さないAAm-gelを作製し,これらのゲルを重ね,塩基性水溶液,及びPd錯体のアセトン溶液を添加したのち,室温で5時間静置した。

その結果,積み重ねたゲル同士が接着する様子がみられ,片方のゲルを持ち上げるだけで他方のゲルもともに持ち上がる様子がみられた。この接着は,ボロン酸を含まないゲル,または,ヨウ素を含まないゲルを用いた場合,あるいは触媒を添加しなかった場合では観察されなかった。

また,ゲル界面の破断試験を行ない,このゲル同士の接着の強さを調べたところ,破断にかかる強さは官能基導入率xの増加に伴って増大することが分かった。これらのことから,この接着は,ゲル界面で鈴木・宮浦クロスカップリング反応が進行し,ゲル間に共有結合が形成されたために起こったと考えられる。

さらに,異種材料間の接着にも取り組んだ。ソフト材料であるゲルに対して,ハード材料としてガラス基板を選び,ボロン酸を修飾したガラス基板(PB-Sub)とヨウ化アリールを修飾したガラス基板(I-Sub)を作製し,これらを用いてゲルとガラス基板間の接着も試みた。

I-gel(x)の上にPB-Subを重ね,塩基性水溶液,及びPd錯体のアセトン溶液を添加し,静置したところ,24時間後に両材料が接着する様子が観測された。I-gel(x)の上にPB-Subを重ね,同様の操作を行なった場合にも,ゲルと基板の接着がみられた。

この接着においても,ゲル間の接着の場合と同様に,ボロン酸を含まない,または,ヨウ素を含まない場合,あるいは触媒を添加しなかった場合には接着は観察されなかった。また,ゲル-基板の接着においても,その接着の強さはゲル側の官能基導入率xの増加に伴って増大した。

これらのことより,この共有結合形成反応を利用した接着機構が,ソフト材料であるゲル同士に限ったものではなくソフト-ハード材料間にも適応できることを見出した。

今回,化学反応により材料同士を直接的に接合するという新たな手法であり,フェニルボロン酸を有するヒドロゲル(PB-gel)とヨウ素を有するヒドロゲル(I-gel)間,及びこれらのヒドロゲルと対応する置換基を有するガラス基板間において,その接触界面で金属触媒を用いた鈴木・宮浦クロスカップリング反応を行なうことで,共有結合形成によるこれらの接着を達成した。

この研究は,共有結合形成による材料同士の接着という新たな接着手法を示すもので,この方法により材料同士を接着剤無しで,安定に接着することができる。また,鈴木・宮浦クロスカップリング反応を利用した共有結合形成により材料間の接着を達成した世界で初めての成果となる。

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