JAXAら,赤外線宇宙背景放射線の大きな「ゆらぎ」を発見

JAXAと東北大学のグループは,米国カリフォルニア工科大学や韓国天文宇宙科学研究院等の研究者らとの協力のもとで実施したCIBER実験により,近赤外線の宇宙背景放射にこれまでの予測を超える大きな「ゆらぎ(まだら模様)」が存在することを発見した(ニュースリリース)。

宇宙の初期を観測的に探るためには非常に遠方の銀河を観測することが必要だが,宇宙の初期の銀河はあまりにも遠くて暗いため,暗い銀河からの光をも含む,近傍から遠方宇宙までの天体の光が足し合わされた宇宙赤外線背景放射をまとめて観測するCIBER実験(望遠鏡をロケットで打ち上げ,観測後に回収するNASAのロケット実験プロジェクト)を行なった。

CIBER実験のために研究グループが開発した高感度の近赤外線カメラは,口径11センチメートルの望遠レンズに100万画素の赤外線検出器を組み合せたもの。波長1.1㎛用と1.6㎛用の2台の近赤外線カメラをNASAの観測ロケットに搭載して打ち上げ,上空 200~330 キロメートルの大気圏外を飛行する約5分間に数カ所の天空の赤外線画像を撮影した。その観測画像から波長1.1および1.6㎛の宇宙赤外線背景放射に未知の「まだら模様」が含まれていることを発見した。

この「まだら模様」は,既知の銀河全ての影響を考慮した予測値の2倍以上あり,これを説明するためには,宇宙に未知の赤外線光源がなければならないことが示された。

これは,宇宙にある未知の天体の存在について新たな仮説を必要とする新発見であり,研究グループは「まだら模様」の原因となる未知の赤外線光源の候補として,銀河の周囲にあるダークマター(暗黒物質)が広く分布する系外銀河のハローと呼ばれる領域に,普通の観測では見えないほどの暗い星がじつは大量に存在するという新たな仮説を提示した。

CIBER実験は今回の研究に用いたカメラだけでなくスペクトル測定装置も備えており,これを用いた観測成果がまとまりつつあるという。研究グループは,「まだら模様」の情報とあわせて総合的に研究を進めることで,今回観測した未知の光源の起源に迫れると考えている。また,望遠鏡の口径を3倍に増大することで,CIBER実験より一桁精度の高い宇宙赤外線背景放射の「まだら模様」の測定を行なう計画も進めている。

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