東北大ら,スピン流の電流ゆらぎの検出に成功

東北大学,大阪大学,京都大学,独レーゲンスブルグ大学らのグループは共同研究により,微少な半導体素子中にスピン流を生成し,それに伴う電流ゆらぎの検出に成功した(ニュースリリース)。

1918年,ショットキーは真空管を流れる電流に注目し,その電流ゆらぎ(雑音)が素電荷と電流の平均値に比例するという普遍的な性質を持つと指摘した。このゆらぎは真空管の陰極からランダムに放出される電子の分配過程と電荷の離散性に起因した現象で,ショット雑音と呼ばれている。ショットとは「粒」のことで,電荷の離散性を端的に表している。

ところで,電子は電荷だけでなくスピンという自由度も持つため,スピンの離散性も電流のゆらぎに何らかの影響を与えるのではないかと考えられていたが,スピンに起因したショット雑音については理論的な提案があったものの,実験的な検証は行なわれてこなかった。研究チームはトンネル接合にスピン流を印加し,それに伴うショット雑音の検出に成功した。

スピン流は電流に替わる新たな物理量として注目されており,近年,その生成・検出手法が盛んに研究されている。今回の研究では,強磁性半導体(Ga,Mn)Asと非磁性半導体GaAsからなるトンネル接合にスピン流を印加し,電流ゆらぎを測定した。さらに,トンネル接合に流れるスピン流と電流を独立に制御することで,ショット雑音に含まれる電流とスピン流の寄与を分離して評価した。

その結果,スピン流の絶対値が求まると同時に,ショット雑音とスピン流の比例関係が実証された。この結果はトンネル過程において電荷とスピンが一体となってトンネルしていることの直接的な帰結となるもの。また,研究では極めて高精度な電流ゆらぎ測定技術を駆使して,スピン流の生成に伴う電子系の温度上昇を実測した。このようなスピン流の非平衡度合いに関する研究はこれまで進んでおらず,今後,この検出手法がスピン流の非平衡状態の研究を発展させていくことが期待できる。

ショット雑音測定は現在までに電子デバイスや人工量子系(メゾスコピック系)の物理の発展に大きく貢献してきた。スピン流に伴うショット雑音も同様に,スピン軌道相互作用や不純物によるスピン散乱,伝導電子と局在スピン間のスピンモーメントの輸送(スピントランスファー効果等)などのスピンに依存した伝導現象を解明する新たな手法になると期待されるという。

従来,スピン流の検出を行うには強磁性体や,スピンホール効果を用いてスピン流を電流に変換する必要があった。ショット雑音による方法を発展させれば,原理的に物質に依存せず,スピン流の絶対値を直接求めることが可能になる。研究グループはこれについて,スピントランジスタやスピン注入磁化反転などの新規デバイスの創出を目指すスピントロニクスの発展において大きな利点となるとしている。

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