静岡大ら,遠赤色光を吸収して光変換/蛍光を発する光センサタンパク質を発見

静岡大学と東京大学の研究グループは,遠赤色光を吸収して光変換する新規の光センサタンパク質を発見し,遠赤色光照射により蛍光を発することも見いだした(ニュースリリース)。

植物や藻類,シアノバクテリアなどの光合成をする生物は,光をエネルギーとして利用し,それ故に最重要な情報としても感知するため,高度な光応答機構を備えている。中でも,シアノバクテリオクロムと総称される光センサが,シアノバクテリアにおいて多様な光を感知し,走光性・光依存的な細胞凝集などの現象を制御していることが知られている。

シアノバクテリオクロムは,フィコシアノビリンという色素を結合するタイプとフィコビオロビリンという色素を結合するタイプが知られているが,それらの色素よりも長波長の光を吸収するビリベルジンという色素を結合するシアノバクテリオクロムはこれまでに一切報告されていなかった。

研究グループは,通常の酸素発生型光合成生物が持つクロロフィルaの代わりにそれよりも長波長の遠赤色光を吸収するクロロフィルdを光合成色素として持つアカリオクロリスというシアノノバクテリアから,フィコシアノビリンだけでなく,ビリベルジンも高効率で結合するシアノバクテリオクロム・AM1_1557g2を発見した。

今回の発見は,ビリベルジンを結合して遠赤色光に応答するAM1_1557g2が,アカリオクロリスの光感知において,生理的機能を持っている可能性を示唆するもの。研究グループは,遠赤色光に応答し光変換する性質や,それよりも長波長の蛍光を発する性質は,光で細胞を制御するオプトジェネティクスや,細胞内の分子動態を可視化する蛍光イメージングなどの技術に将来的に資する可能性を秘めているとしている。

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