東大ら,印刷で作製した電子タグによる温度センシングとデジタル信号の伝送に成功

NEDOプロジェクトにおいて東京大学,大阪府立産業技術総合研究所等のグループは,印刷で製造可能な有機温度センサと高性能有機半導体デジタル回路を開発し,電子タグとして温度センシングと商用周波数での温度データ伝送に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。デジタル回路を用いる低消費電力の設計と室温近くの大気中での半導体製造工程により,省エネルギーを実現する。

具体的には,有機半導体を塗布し結晶化させる技術を基に,高性能の有機CMOS回路と塗布して作れる有機デジタル温度センサを独自開発し,13.56MHzの商用周波数によって電波でのデジタル信号の伝送を実現した。従来の塗布型有機半導体よりも,10倍以上高い性能で,1/10以下の低コスト化が可能な印刷法で形成でき,さらにセンサ部も塗布法で作成し,温度検知機能つき物流管理タグとして利用できることを示した。

東京大学グループが開発した「塗布結晶化法」は,有機半導体を溶液で塗布すると同時に結晶化させて膜にすることができる手法。今回新たに開発した方法では,p型及びn型の有機単結晶をライン状に連続成長することによって,10cm角程度の「有機CMOS回路」を製作することが可能になった。

p型及びn型の有機半導体分子が混合することなく,規則正しく配列するため,高移動度の有機半導体を形成でき,集積化に適した多数の同じ特性のトランジスタを製作できる。さらに,富士フイルムと共同で,フレキシブル基板上のプロセス検討を行ない,デジタル回路動作の確認にも成功した。

大阪府立産業技術総合研究所のグループは,溶液から簡便に作れる有機高分子材料PEDOT:PSSの抵抗が温度変化する現象に着目し,室温付近で感度の高い,低温塗布型有機温度センサを開発した。

さらに,典型的な塗布型有機トランジスタの性能(0.1-1 cm2/Vs)を1桁も上回る10 cm2/Vsのキャリア移動度を有する有機半導体「アルキルDNBDT」を用いて,抵抗のアナログデータをデジタルデータに変換する回路を構築した。これにより,物流管理や体温モニタに利用できる印刷プロセスによる低コスト,フレキシブルのデジタル温度センサを得た。

上記CMOS回路をトッパン・フォームズが開発した低コストのアンテナデバイスと同一プラスティック基板に実装し,温度センサと直結することにより,13.56 MHzのRFID信号で温度データのデジタル伝送に成功した。

印刷が可能な有機デジタル回路によって,センサ出力のデジタル変換とRFIDデジタル通信による信号伝送が実現したことは,NFC(near-field communication)用低コストかつ軽量フレキシブルのセンシングデバイスの開発に直結する。今回の研究開発は,以前の塗布型有機半導体よりも,10倍以上高い性能の有機TFTが,1/10以下の低コスト化が可能な印刷法でp型及びn型の半導体薄膜が形成でき,CMOS回路として集積化できることを示した。

研究グループは現在,より多ビットのデータ伝送を目的として,論理回路の更なる集積化を可能にする研究開発を進めている。塗布・印刷法等により一度に大面積フィルム上にデバイスを形成することにより,低コストの生産が可能となるため,物流を効率化する省エネ用電子タグや医療用センシングデバイスなどの普及につながるとしている。

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