理研ら,原料を混ぜるだけで「高分子を精密に合成する方法」を開発

理化学研究所(理研)と東京大学,大阪大学らの共同研究グループは,試験管中で原料を混ぜるだけで「高分子を精密に合成する方法」を開発した(ニュースリリース)。

プラスチックやゴムのような素材は小さな分子(モノマー)が鎖状につながった高分子(ポリマー)からできており,必要とする機能に合わせて,つなぎ方が精密に制御されている。しかし,ニーズに合わせ多種多様な高分子を作製するには,高度な専門知識と熟練した技術,反応条件を制御できる設備による精密合成が必要となる。

1980年代後半に,「温和な条件下で原料を混ぜるだけ」でできる高分子「超分子ポリマー」の合成法が報告されているが,この合成法では小分子同士が勝手に連結してしまうため,思い通りの設計は実現できない。

そこで,共同研究グループは,小分子が持つ2つの連結点をあらかじめ分子内で接着することで環状にし,他の分子と勝手に連結できなくした。そこに連結反応を促す小分子(連結反応開始剤)を混ぜたところ,鎖状の2量体をつくり,さらに3量体,4量体と連結反応を繰り返し,鎖の長いポリマーに成長した。

例えば,連結反応開始剤に対して環状の小分子を1,000倍加えれば,1,000回の連結反応が繰り返されるので,鎖の長さを一義的に決めることができる。

共同研究グループが開発した高分子の精密合成法は,誰でも,どこでも高分子の精密合成ができる手法。自由な設計が可能なため新しい高分子材料の開発につながると同時に,製造プロセスを著しく簡素化し,コストの削減が期待できる。

また,分子同士が化学結合していないため,簡単な操作で原料まで分解できることから,完璧なリサイクルを実現し環境に影響を与えないことも大きな特徴だとしている。今後,高分子合成の例をどれだけ増やしていけるかが課題となるという。

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