東工大ら,原始惑星系円盤を貫く磁場の強度が上限値を持つことを理論的に解明

東京工業大学と工学院大学の研究グループは、惑星形成の母体である原始惑星系円盤を貫く磁場の強度が,ある上限値を持つことを理論的に解明した(ニュースリリース)。さらに,天文観測から示唆される原始星の磁場強度,および原始惑星系円盤から中心星へのガスの供給率が,この研究の理論的予言によって統一的に説明できることを明らかにした。

我々の住む地球をはじめとする惑星は,原始惑星系円盤と呼ばれるガス状の円盤(星雲)の中で形成されると考えられている。このような円盤がどのように形成され,どのように消失していくのかを明らかにすることは,天文学・惑星科学における重要な研究課題となっている。

近年の理論研究によって,原始惑星系円盤の進化を引き起こす主な原動力は,円盤ガスと星間磁場との相互作用である可能性が明らかになってきた。しかし従来,円盤を貫く磁場の強さは観測的な制約が乏しく,磁場が円盤の進化を引き起こすという理論シナリオを検証することは困難となっていた。

研究グループは,磁場の円盤内輸送に対する「平均場モデル」と呼ばれる理論を用いて,原始惑星系円盤を貫く磁場の強度に対して,ある上限値が存在することを理論的に導いた。この理論モデルは1990年代に提唱されて以降,数学的に厳密な解が未知であったが,研究ではコンピュータによる数式処理を駆使して厳密解を導くことに成功し,これが磁場強度の上限の発見につながった。

さらに,近年の円盤進化モデルを用いて,この上限値から予想される原始惑星系円盤のガス降着率を算出したところ,天文観測から示唆されるガス降着率の範囲をよく説明することが明らかになった。磁場強度の上限値の存在は,若い星がその母体である分子雲コアに比べて非常に小さな磁束量を持つこととも調和的である。

この研究成果は原始惑星系円盤の磁場強度に対して具体的な予言を与えるものであり,惑星を育む原始惑星系円盤が磁場の影響によってどのように進化するかを解明するための重要な手がかりとなることが期待されるもの。また,磁場を介して進化するガス円盤は,中性子星の周りや銀河中心核にも存在すると考えられており,この研究成果はこのような高エネルギー帯での物理現象にも応用が期待されるとしている。

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