日立,大規模・分散型データセンター向け400Gb/s級光伝送技術を開発

日立製作所は,多拠点に分散したデータセンター間の通信や大規模データセンター内のネットワークを対象とした大容量・高信頼ネットワーク技術を開発した(ニュースリリース)。実際のフィールドに敷設した20kmの光ファイバを用いた試験用プラットフォームにて,データセンターのネットワークを想定した光伝送およびシステムの連携実験を行ない,その実用性を確認した。

近年,データセンターが扱うデータ量は急激に増加しており,それにともないデータセンター内のサーバやストレージの設置台数も増えている。データセンター内では,スイッチやルータ装置を用いて,複数のサーバやストレージから出力されたデータ回線を段階的に集約し,外部とデータを送受信している。

しかし,1台のルータやスイッチ装置で集約できる回線数には制限があるため,データセンター内のサーバやストレージの増加にともない,経由するスイッチやルータ装置が増えることによる転送遅延が発生し,データセンター全体の性能向上を阻害する要因になっている。

また,データセンターが大規模化していくと,広域災害などによるネットワークの遮断や,データセンターの停止により社会に与える影響が甚大になることが予想されることから,1ヶ所のデータセンターでトラブルが発生した際にデータ処理を瞬時に移行して運用を継続できる多拠点,分散型のデータセンターが求められている。

このようなニーズに応えるため,同社は,①低遅延かつ効率良くデータセンター内のデータを集約する技術,②400Gb/s級(従来比4倍)でデータセンター間の大容量通信を実現する光多値伝送向け送受信技術,③複数の伝達路を持つマルチコア光ファイバを用いた災害に強い伝送経路冗長化技術を開発し,データセンター向け大容量・高信頼ネットワークシステムの構築を図る。

具体的には,①について,データセンター内の各サーバやストレージなどから出力されるデータ回線をビットごとに順番に1本の回線に集約し,各送信先に自動的に振り分ける技術を開発した。あらかじめビットごとに送信する順番と送信先をひもづけし,転送後に自動的にデータを各送信先に振り分けることで,パケット通信で行なっていた複雑な処理が不要になる。これにより,各種プロトコルの影響を受けず,サーバ向けLANやストレージ向けネットワークをまとめて集約できるようになる。

②については,16値多値光通信方式に対応した,10~40kmの中距離通信用の光送受信器を試作した。従来,データセンター間やデータセンターと建物などをつなぐ光通信ネットワークは2値変調を行なっていた。これにより1本の光ファイバあたり400Gb/sのデータ通信を実現する。試作した光送受信器では,構造が簡素な光検出器を用いて多値信号を受信する遅延検波方式を採用し,リアルタイムでの動作を確認した。

③は,7本のコアを内包するマルチコアファイバを用い,一部のコアを平常時には予備のコアとするとともに,1本のコアを通信断絶の検出,および通信装置間での通信経路切替え制御信号の交換に常時使用する冗長化技術を開発した。これにより,あるファイバで通信遮断が生じた際には,使用中だったコアの通信を他のファイバの予備のコアに迅速かつ確実に振り分け,災害時における通信路の遮断を回避する。

同社は開発技術の実用性を検証するために,北海道札幌市に敷設された20kmの光ファイバを用いて,データセンター内外のネットワークを模擬した試験用プラットフォームを構築し,今回開発した3つの技術を連携させた実証実験を行なった。その結果,回線を集約する際のデータ転送遅延を1マイクロ秒以下に低減,20kmの通信距離で従来比4倍となる400Gb/s級光通信,マルチコアファイバによる経路の高速切替え動作などを確認し,開発技術の実用性を確認した。

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