NIMSら,高分子を鋳型とする均質な金ナノ多孔体を開発

物質・材料研究機構(NIMS)は,国内外の研究機関との国際共同研究において,高分子を鋳型として活用することで,均一で規則的なナノ空間を持つ金ナノ多孔体の開発に成功した(ニュースリリース)。

内部に直径数㎚の細孔状の空間が配列し,体積に比べて大きな表面積を有するナノ多孔体は,これまでにない新たな化学反応の場をもつ材料として期待され,触媒材料及び吸着材料等へ向けた研究・開発が活発に行なわれてきた。

特に金ナノ多孔体は,エレクトロニクスから触媒,医学にいたるまで,様々な分野での応用が提案され,金ナノ粒子,金ナノロッド,金ナノワイヤなどさまざまな形状が報告されている。しかし,これら従来の金ナノ多孔体は,構造の規則性が乏しく,孔の大きさを自由に制御できる金ナノ多孔体の創出が望まれていた。

近年,両親媒性分子(界面活性剤など)を鋳型として用いることで金属骨格を有するメソポーラス金属の合成も可能となってきた。そこで研究では,疎水性と親水性の性質をあわせ持つ高分子(両親媒性ブロックコポリマー)の希薄溶液中で濃度を調整することで,均一なサイズの球状ミセル(分子集合体)を形成した。

これらを鋳型として用いて,精密な電解析出の制御のもとに金イオンを還元させた結果,ミセルのサイズに応じたナノ細孔を膜一面に形成することに成功した。

得られた金ナノ多孔体の細孔中には,特徴的な高強度電場が確認され,表面増強ラマン散乱(SERS)が観測されるなどの特徴を有している。今後,分子センシングのためのSERS活性基板や電極触媒など,様々な応用が期待される。

さらにこの技術は,金に留まらず,様々な金属・合金系に適用でき,またブロックコポリマーの分子サイズを変えることで,より広範囲で細孔径を制御することが可能なため,組成・構造の両面から用途にあった金属ナノ空間材料をテーラーメイドでデザインすることができるという。

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