理研とDNP,ナノインプリントによる細胞培養プレートを開発

理化学研究所(理研)と大日本印刷(DNP)は共同で,ナノレベルの微細加工技術を利用した細胞培養プレートの開発に成功した(ニュースリリース)。これにより,細胞にダメージを与えず容易に分離することが可能となり,再生医療に係わる細胞の品質と安全性の向上が期待されるという。

再生医療関連の動きが活発化しているが,再生医療や創薬,細胞移植治療については,体外から良質で均質な機能性細胞を取り込む技術が重要であり,なかでも,培養過程で細胞の分化状態を識別し,異質な細胞を分離させる技術はその基盤となる。従来,細胞の分化状態を識別する際は蛍光ラベルを付与し,溶液に細胞を分散させて分離していたが,これらの処理は細胞にダメージを与える懸念があった。

今回研究グループは,細胞種の違いで親和性(相性の良し悪し)が顕著に異なる表面微細構造の同定に成功した。この成果を活かし,DNPのナノインプリント技術によって,ガラスの表面を凹凸構造に加工した細胞培養プレートを開発した。これにより,再生医療に欠かせないダメージのない良質な細胞を得ることができるという。

DNPが提供する細胞培養プレートの特徴は以下の通り。
•ガラスの表面に100nm~300nm程度の微細な凹凸構造を施すことにより,細胞種の識別・分離機能を有した製品の提供を目指す。
•蛍光観察や高解像度顕微鏡観察に対応するため,カバーガラスと同等の薄いガラスへの超微細加工を実現した。
•DNPが保有するナノインプリント技術により,均質で高精細な凹凸構造品の量産が可能。

DNPは,細胞培養や創薬を行なう企業・研究機関・医療機関などに向けて,今回開発した細胞培養プレートを2016年から提供していく計画。また,このプレートを使用した細胞培養装置なども開発していくほか,研究機関向けには研究評価用に最適な細胞培養プレートを要望に応じて提供していくという。

また,この成果を細胞培養プロセスの基盤技術革新の大きなソリューションとすべく,さらなる機能拡張と用途展開を目指す。DNPは,今後もナノレベルの微細加工技術やその他保有技術を活用・融合し,ライフサイエンス分野に向けた製品の開発を通じて,再生医療の普及や細胞移植治療・創薬研究分野に注力するとしている。