理研,耐久性と変換効率を向上した塗布型太陽電池を開発

理化学研究所(理研)の研究チームは,半導体ポリマーを塗布して作る有機薄膜太陽電池(OPV)のエネルギー変換効率と耐久性を同時に向上させることに成功した(ニュースリリース)。

OPVは半導体ポリマーを基板に塗布することで作製できるため大面積化が可能。このため,低コストで環境負荷が少ないプロセスで作製でき,現在普及しているシリコン太陽電池にはない軽量で柔軟という特長を持つ次世代太陽電池として注目されている。一方,OPVの実用化には,エネルギー変換効率とともに耐久性を向上させることが大きな課題だった。

研究チームは,エネルギー変換効率の向上を目指して研究を進め,OPVの変換効率だけでなく,耐久性(耐熱性)も向上させる新しい半導体ポリマー「PTzNTz」の開発に成功した。2014年に研究チームが開発した半導体ポリマーであるPTzBT素子とPTzNTz素子(PTzBTあるいはPTzNTzを塗布して作製したOPV)を比較したところ,エネルギー変換効率が7%から9%まで向上した。

また,これらの素子の耐久性を評価するため85℃に加熱して500時間保存したところ,PTzBT素子では,エネルギー変換効率は初期値の半分以下まで低下したのに対し,PTzNTz素子ではエネルギー変換効率がほとんど変化しなかった。これは,実用レベルに近い耐久性であると考えられる結果。

エネルギー変換効率9%はOPVとしては非常に高いエネルギー変換効率となる。加えて,これほど高い耐久性を示す半導体ポリマーは,他に類を見なかった。

今回の研究により,OPVは耐久性が低いという従来の認識を覆すことができた。研究チームはこの知見を基に,耐久性が向上した原因を調査することで,さらに高い変換効率および高い耐久性を示す半導体ポリマーの開発研究,ひいては実用化に向けた研究が加速すると期待している。

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