京産大ら,衛星からの彗星観測に成功

京都産業大学,立教大学,JAXAは共に,JAXAが打上げた超小型深宇宙探査機プロキオンに搭載する,立教大学,東京大学およびJAXAが共に開発した望遠鏡「LAICA」を用いて,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の観測に成功した(ニュースリリース)。

LAICA望遠鏡は,本来,地球の周りをおおっている水素ガスの層「ジオコロナ」を宇宙空間から撮影することを目的に開発された望遠鏡だが,今回,LAICA望遠鏡を使って彗星の観測に挑戦した。

現在,ヨーロッパの彗星探査機「ロゼッタ」が観測を実行中のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星をLAICA望遠鏡によって観測できれば,彗星近くに留まって観測を続けているロゼッタ探査機との連携によって新しい知見が得られる可能性がある。

観測の結果,9月13日に同彗星が発する水素ガスの光を宇宙から撮影することにも成功した。この光は「ライマン・α」と呼ばれる特殊な光で,地上からは地球の大気が邪魔をして観測することができないもの。

通常,彗星から放出されるガスは地形の広がりを示すのが一般的だが,水素原子からなるガスでは,太陽からの強烈な紫外線によって,太陽の反対方向に少しひしゃげた形になることがある。しかし,今回,観測で得られた水素ガスの分布は,予想を上回る非対称性を示しており,「ジェット」と呼ばれる局所的なガス噴出の影響を受けている可能性が高い。

このような観測が成功した鍵は,LAICA望遠鏡の性能(空間分解脳)の高さにある。今回の撮影によりこれまで地上からは得られなかった彗星の活動が明らかになり,また,ロゼッタ探査機との連携によって突発的な彗星からのガス放出についての理解が進むと期待されるとしている。

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