NICT,迅速な3Dコンテンツ制作法を開発

情報通信研究機構(NICT)ユニバーサルコミュニケーション研究所は,テーブル型メガネなし3DディスプレイfVisiOn(エフ・ビジョン)の技術を応用し,一般のCGクリエーターでも簡単に全周3D映像のコンテンツが制作でき,fVisiOn上で即座に体験できるシステムの開発に成功した(ニュースリリース)。

fVisiOnは,テーブルの下に円状に並べた大量のプロジェクターと円錐型の光学素子(背面投影式の特殊なスクリーン)を使い,この机の上に物がある光の状態を,テーブルの円周方向に再現する原理となっている。

1つのプロジェクターは,複数の異なる視点位置に届く光線を同時に再生する。再生したい3D形状の表面が放つはずの様々な光線を,幾何学的に一つ一つ計算する専用のソフトウェアを開発したが,大量の光線計算に長い時間がかかる上に,元データ(コンテンツ)の制作にも専門的な光線幾何学の知識が必要だた。

今回,fVisiOn特有の大量の光線計算を並列化し,リアルタイムに計算できるアルゴリズムを新たに開発した。このアルゴリズムは,コンテンツ制作で一般的に利用されつつあるUnity上で動作し,ライブラリとして利用可能な形に整備した。

これにより,CGクリエーターは,なじみのある手法でコンテンツを制作した後,簡単にfVisiOn専用のコンテンツに簡単に変換できるフレームワークが完成した。一般的なコンテンツ制作ソフト上でフレームワークを構築したため,流通している形状データや,センサーを用いたインタラクティブなコンテンツも制作しやすくなった。

また,これまでの試作機の見かけ上の立体映像の解像度は100×100画素相当だったが,今回新しく同時に開発した試作機では400×400画素相当になり,16倍の情報量に向上した。解像度が向上したことにより,複数形状の同時表示や,細かい形状の確認がしやすくなった。また,これまでは手作業により試作された光学素子に起因して発生していた画像の乱れが,新規開発の光学素子では解消された。

今回新しく開発したテーブル型3Dディスプレイの装置全体は,直径90cmのテーブル型に仕上げられている。内部にはモジュール化されたプロジェクターアレイが円形に配列され,テーブル面中央真下に配置された円錐型の光学素子に様々な方向から大量の光線を投げかけ,テーブルの上に立体映像を再生する。

1つのモジュールが一人分(30度程度)の立体映像を再現できるため,少数のモジュールと円錐光学素子で,一人や少人数で3D映像を体験できる環境にすることも可能になっている。

今後は学会で発表及び実機展示を行なうと共に,コンテンツメーカーへの試作機モジュールの貸出し,製品化なども検討していくとしている。

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