理科大,実用的なホログラムメモリーを開発

東京理科大学は,新しく開発した「3次元クロスシフト多重方式」により,5インチフォトポリマ-ディスクと小型で簡易な光学系,メカ機構を用い,実用上十分な2テラバイトのホログラム多重記録が可能なメモリー技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

ホログラムメモリーは記録再生システムの不安定性,容量不足あるいは互換性確保に課題が残り,かつ記録媒体においても感度,容量不足の問題もあったことから,開発は衰退し有力研究機関が相次いで撤退した経緯がある。

今回,システムとして課題であった,記録再生システムの安定性,容量の拡大および転送速度の向上,あるいは光学系とメカ機構の小型・簡略化などを実用性の観点から開発を進めた。その結果,記録再生の安定性,大容量性に優れ,かつ光学系,メカ機構も簡略化可能な「3次元クロスシフト多重方式」という新たな多重化技術を開発した。

これは,信号光と参照光の干渉により情報記録を行うホログラムメモリー技術において,参照光を球面波とし,ディスク媒体のXY2次元空間のシフト多重記録にさらに微小角度の媒体のチルト効果を利用した 3次元空間でのシフト多重記録を行なう方式。

これにより同一のトラックに複数のシフト多重ホログラム系列の重ね書きが可能となり,大容量化と光学系,メカ機構の簡略化,高速再生が可能となった。

また,システム化の要素技術として,情報の入出力信号処理技術,記録再生シミュレーション技術,ホログラムメモリー用レンズ設計技術の開発を併せて行ない,これらを総合して5インチディスクで,DVD の400倍となる2テラバイトの大容量記録再生を可能とする実験機を試作することに成功した。

また安定性,互換性,転送速度なども十分実用に供するレベルに達し,システムの実用化に世界で初めて目途を付けた。

媒体は三菱化学が高感度,大容量性および長期信頼性に優れた実用的なディスク型媒体の実現を可能にしている。研究グループは当初から同社との共同研究開発を進め,ドライブ技術と媒体の整合を図るなどの技術開発を通してシステムの実用化に目途をつけた。

ホログラムメモリーは莫大な情報を保管する放送局やデータセンターでの情報アーカイブ用途に適している。超大容量,長期保存性と同時に,データセンターなどで大きな課題となっている低消費電力化にも大きく貢献するという。

商用的には2020年東京オリンピック開催に伴う高精細映像のアーカイブを第一ターゲットとして開発を進めていく予定。現在,要素技術開発は終え5インチディスク媒体を用いたデモ機の構築も終了した。

今回,3年後を目途に情報アーカイブの市場に製品投入を図る予定だとして,パートナー企業との共同開発を検討しており,製品レベルの機器開発を共同で行える企業,団体を募っている。

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