X線天文衛星「ASTRO-H」,2月12日打上げ

早稲田大学の理工学術院(先進理工学部応用物理学科)も参加する,X線天文衛星「ASTRO-H」を載せたH-IIAロケット30号機が,2016年2月12日種子島宇宙センターより打上げられる(ニュースリリース)。

「ASTRO-H」は,ブラックホール,中性子星,超新星残骸,銀河団など,X線やガンマ線を強く放射する高温・高エネルギーの天体の研究を通じて,宇宙の構造とその進化の解明を目指す天文衛星。

宇宙は冷たく静穏に見えるが,X線やガンマ線を用いて観測すると,我々の住む銀河系も,またその外側に広がる広大な系外宇宙においても,数千万度から数億度の超高温現象や,爆発・衝突・突発現象などの激動に満ちた,「動的な」姿が見えてくる。X線やガンマ線は地球の大気に吸収されてしまうため地上に到達することができない。そのため,宇宙で観測することが必要となる。

「ASTRO-H」の観測により期待される成果としては以下の通り。

宇宙最大の天体である銀河団は,衝突・合体を繰り返して成長する。 「ASTRO-H」は,銀河団に満ちている超高温ガスが放射するX線の波長(エネルギー)を,これまでにない精度で正確にとらえることが可能。これにより,衝突・合体によって引き起こされた乱流の速さや強さ,ガスの運動エネルギーを求め,銀河団や宇宙の大規模構造がどのように形成され,成長してきたかを解明することが期待される。

ブラックホールや中性子星,白色矮星などの天体では,超高密度・超強磁場・強重力など,地上では決して作り出せない極限状態が実現している。「ASTRO-H」は,これら極限状態の天体を,低エネルギーX線から軟ガンマ線まで,過去にない広大なエネルギー(波長)範囲で同時に観測する。

これにより,宇宙空間で起きる爆発現象やブラックホール近傍での時空の歪み,宇宙空間を飛び交う高エネルギー粒子(宇宙線)はどこで・どのように加速されているかなど,極限状態での物理現象と宇宙のダイナミクスを検証する。

「ASTRO-H」は,JAXA,NASAをはじめ,国内外の大学,研究機関から250人を超える研究者が参加して開発されたX線天文学の旗艦ミッション。これらの国際メンバーは多数の企業技術者と協力して装置開発や衛星の試験を行なうとともに,データ解析ソフトウェアや衛星の運用体制を整え,打ち上げ後の観測計画を整備しつつあるとしている。

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