X線天文衛星「ひとみ」,太陽電池の展開に成功

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月17日,種子島宇宙センターから、H-IIAロケット30号機にて打ち上げられたX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)が,打ち上げ後の軌道上において太陽電池パドルを予定通り展開することに成功したと発表した(ニュースリリース)。

「ひとみ」に搭載される最先端の装置「X線マイクロカロリメータ」は,宇宙からのX線を世界最高の分光性能で観測する。また同時に搭載される3種類の検出器は,軟X線から軟ガンマ線までの広い波長帯域で,高感度を実現する。

軟X線分光検出器(SXS)には,50mKという極低温で動作する素子を使い,X線光子のエネルギーを熱に変えることで従来の10倍以上の精度でその値を測定する。硬X線望遠鏡(HXT)は,焦点面におかれた硬X線撮像検出器(HXI)と組み合わせることで,世界で初めて硬X線の集光撮像観測を実現する。

軟X線撮像検出器(SXI)は日本で開発された大面積CCDを用い,広視野での高感度観測を行なう。軟ガンマ線検出器(SGD)は,「狭視野半導体コンプトンカメラ」という名前の,この帯域での観測手法を一変させる技術で作られ,世界最高感度の軟ガンマ線観測を目指す。

「ひとみ」はこれらの新機能を駆使し,暗黒エネルギーや暗黒物質(ダークマター)の支配のもとで「見える物質」が宇宙最大の天体である銀河団を作ってきた過程や,多数の銀河の中心に君臨する巨大ブラックホールの生い立ちに切り込み,また中性子性やブラックホールにおける極限状態での物理法則を探る。

具体的には,「ひとみ」は80億光年先までもの遠方(過去)を,これまでのX線天文衛星を遥かに凌駕する能力で観測する。そして,銀河団の中に渦巻く,X線でしか観測できない数千万度の高温ガスの激しい動きの直接測定や,今までは感度が足りなくて観測できなかった生まれたての銀河の中心にある巨大ブラックホールなどの観測を行ない,宇宙がどのように進化して,今ある宇宙になったのかの謎に迫る。

「ひとみ」に搭載された主要なミッション機器は以下の通り。
1. 硬X線望遠鏡+硬X線撮像検出器(2式)
2. 軟X線望遠鏡+軟X線撮像検出器(マイクロカロリメータ,CCD カメラ)
3. 軟ガンマ線検出器

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