東北大,ステンレスの腐食を蛍光イメージングで可視化

東北大学の研究チームは,水溶液中における金属表面の水素イオン濃度指数(pH)と塩化物イオン濃度の分布を同時計測できる蛍光イメ ージングプレートを開発し,ステンレス鋼のすき間腐食発生過程における水素イオンと塩化物イオンの局部的な濃縮とその時間変化を観察することに成功した(ニュースリリース)。

金属材料の腐食現象では,水素イオンと塩化物イオンの局部的な濃縮が重要な役割を担う。しかし,pHと塩化物イオン濃度の分布を同時に計測することは不可能だった。今回,水素イオンと塩化物イオンに対し,それぞれに選択的に応答する二種類の蛍光試薬を石英板に塗布し感応膜とすることで,pHと塩化物イオン濃度の分布を同時に計測・可視化できる技術を開発した。

また,開発した蛍光イメージングプレートを,水溶液中においてステンレス鋼表面に密着させてすき間を形成し,すき間腐食が生じる際のpHと塩化物イオン濃度の分布状態の経時変化を蛍光画像として撮影することに成功した。

開発した蛍光イメージングプレートは,励起光として紫外光を用い,波長を切りかえることで,pHあるいは塩化物イオン濃度に対応した発光状態となる。励起光の波長を270nmとし,吸収フィルターにより475nmから570nmの発光を計測した場合,pHが低下するほど緑色(ピーク波長:544nm)の発光強度が低下して画像は暗くなる。

この際,緑色の蛍光強度は,塩化物イオン濃度に依存して大きく変化することはない。また,励起光の波長を330nmとし,吸収フィルターにより380nmから530nmの発光を計測した場合には,pHに依存することなく,塩化物イオン濃度が高くなるほど水色(ピーク波長:447nm)の発光強度は低下して画像は暗い紺色になる。したがって,励起光の波長を高速で切りかえることで,ほぼ同時にpHと塩化物イオン濃度に対応した蛍光画像を連続撮影することができる。

また,今回開発した蛍光イメージングプレートは,可視光(波長350nm以上)による照明では発光しない。感応膜を作製するための試薬類や石英板も無色透明であるため,紫外線を照射しない状態では蛍光イメージングプレートは無色透明。したがって,蛍光イメージングプレートに覆われた状態であっても,金属表面の溶解・侵食状態などを鮮明な画像として観察することができる。

今回開発した蛍光イメージングプレートは,金属腐食の素過程の解析にとどまらず,電気めっき,電解合成,電池反応など多くの電気化学現象の機構解明に応用できるものと期待されるとしている。

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