阪大,光で伸縮するゲルを開発

大阪大学は,環状多糖のシクロデキストリン(CD)と光刺激応答性分子であるアゾベンゼン(Azo)をセンサー&コントロール機能分子としてヒドロゲルに組み込み,高い靭性(延び)を有し,光の照射波長に応じて屈曲したり,収縮または伸長したりするゲルアクチュエータを開発した(ニュースリリース)。

近年,筋肉のような任意の刺激に応じて形態変化を示すフレキシブル材料が注目を集めている。その中でも,高分子ゲルを利用したゲルアクチュエータは柔らかいという特徴を有しており,機能性ソフトマテリアルの作製に適している。従来のセラミックや金属を用いたハードアクチュエータとは異なり,軽くて伸縮性が大きいことから新たな人工筋肉やフレキシブル電極などへの利用が求められている。

人間の体内ではすでに,傷がついても時間経過とともに自然治する機能や,外部刺激に対して応答する運動機能など,生物が生きていくうえで必要不可欠な機能が,天然のアクチュエータにより運用されている。

このような機能を示す生体のアクチュエータは90%以上が水で構成されているヒドロゲルからできている。天然のゲルアクチュエータが分子認識をシグナルとして運動機能を制御していることに鑑み,研究グループでは合成したヒドロゲルを用いて人工系のゲルアクチュエータを作製することにした。

研究ではこの生体のアクチュエータを参考に,刺激に対して可逆的に応答する環状多糖のシクロデキストリン(CD)と光刺激応答性分子であるアゾベンゼン(Azo)を,センサー&コントロール機能として用いたヒドロゲルのゲルアクチュエータを開発した。

開発したゲルアクチュエータは,水中で紫外光(365nm)に対して応答し,光源方向に向かって屈曲した。紫外光の照射を停止しても,屈曲状態を維持し続けた。続けて可視光(430nm)を照射すると,屈曲状態からもとの状態へと戻った。さらに乾燥体のゲルはより高速で応答し,物体を挟むアームとしても利用できることが明らかとなった。

この研究の特徴は以下のとおり。
①従来開発されているアクチュエータと駆動原理(電荷の偏り・架橋密度変化)が異なる。
②分子認識を利用し,分子の“すべり”を駆動原理としたアクチュエータ。
③分子構造上,高い靭性(延び)を有する。
④光刺激により制御が可能。
⑤湿式だけでなく,乾式でも機能。

このゲルアクチュエータを制御する方法として,疎媒性変化,温度,pH,電気,磁場,などの刺激が考えられる。光刺激を利用することで,直接操作できない空間に位置する材料を遠隔にて操作することが可能であり,配線を不要とするため,マイクロアクチュエータへの展開に有利だとしている。

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