京大,チップ上で光の瞬時転送に成功

京都大学の研究グループは,フォトニック結晶チップ上の微小点に保存した光を,「任意のタイミングで」,別の微小点に,「一方向かつ高効率に」(>90%)瞬時に転送可能な新しい光制御技術の開発に成功した(ニュースリリース)。

将来の量子情報等の高度な情報処理を可能とする光チップを実現するためには,光を微小点に保存するためのナノ共振器の開発,ナノ共振器に保存した光と電子系の相互作用等に基づく光量子演算ユニット等の形成,およびそれらを集積し,複数の演算ユニット間での情報転送の実現など,様々な課題が存在する。

これまで研究グループは,光の波長程度の周期的屈折率分布をもつ独自のフォトニック結晶を用いて,1) 光を微小点に長く保存することの出来る高Q値ナノ共振器の実現 2) ナノ共振器への光の出し入れや光メモリー動作の実現 3) ナノ共振器の集積と強結合状態の形成等の研究を進めてきた。

今回,上記,1)-3)に続く展開として,高Q値ナノ共振器に保存した光を,制御光の照射により,別の離れたナノ共振器に,“任意のタイミングで”,“高効率に”転送することに成功した。この成果は,光量子演算ユニット間の情報転送等を可能するもので,上記の全体目標達成に向けた一歩と言える。また,これらを複数個集積することで,他の様々な機能の実現も期待される。

得られた現象は,ナノ共振器 A(=共振周波数ωA)に蓄積した光(=周波数ωA)を,別のナノ共振器B(=共振周波数ωB)へと転送させるもの。 転送の際には,共振器AとBの中間に位置する第3のナノ共振器C(=共振周波数ωC)へ制御光の照射を行ない,その共振周波数ωCをωC<<ωA の状態からωB<<ωCへと断熱的に変化させ,これにより,光を共振器Aから共振器Bへと一方向に,高効率(>90%)に,瞬時に(<100ps)転送することに成功したもので,物理的にも極めて興味深いものだとしている。

関連記事「東大ら,量子テレポーテーション心臓部を光チップ化」「横国大,ダイヤモンドによる量子テレポーテーションの新原理を発見