東大ら,理想的なフェライト棒磁石とプローブを開発

東京大学,筑波大学,日立ハイテクサイエンスらの共同研究グループは,ε-Fe2O3単結晶フェライト棒磁石を合成し,磁気力顕微鏡用の探針(プローブ)を開発した(ニュースリリース)。

フェライト棒磁石はありふれた安価な物質からできており,玩具,固定用具,工芸品などに使われている。通常,フェライト棒磁石は,磁性粉を熱プレスすることによって製造されるため,単磁区構造をとっていない。

一方,研究では,単磁区構造を有する理想的な単結晶ハードフェライト棒磁石を開発することに成功した。この棒磁石は,強い外部磁界をかけてもその磁極が反転しにくいε-Fe2O3からできたサブミクロンサイズの単結晶フェライト棒磁石で,強磁場環境や電流印加にも耐久性を持ち,錆びない。

この性質を利用して,ε-Fe2O3を探針先端に固着した磁気力顕微鏡プローブの開発を行なった。このε-Fe2O3磁気力顕微鏡プローブは,従来測定が困難であった強力な磁石の表面や,強磁場下での磁性材料の測定を可能にするという。

また,181GHzという極めて高い周波数のミリ波吸収を示すことが明らかになり,ε-Fe2O3フェライト棒磁石からなる塗布液とフィルムの開発も行なった。ε-Fe2O3フェライトは,高周波ミリ波吸収材として安全運転支援システムなどのIoTに貢献する素材として注目されており,本年7月より英国立ロンドン科学博物館にて特別展示される予定だという。

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