東芝,単眼カメラによる高精度測距技術を開発

東芝は,単眼カメラで撮影した1枚の画像から,カラー画像と距離画像を同時に取得できる撮像技術を開発した(ニュースリリース)。

近年,自動車では,前方,後方,周辺に複数のカメラやセンサーが搭載され,自動運転などの運転支援の高度化が進みつつある。また,ドローンやロボットなどの遠隔操作によるインフラ点検など,カメラによる画像センシングの重要性が増している。

これらの用途では,2次元の映像を撮影するだけでなく,対象物の形状,動き,距離などの動的な3次元空間の把握が求められる。従来から,ステレオカメラ,赤外線デプスセンサー,超音波センサー,ミリ波レーダー,LiDAR,SfM技術など,対象物までの距離を計測するさまざまな方式が提案されている。

ステレオカメラでは,高い距離精度を得るためには,2つのカメラ間の距離を30cm程度まで離す必要があり,小型化が難しい。赤外線デプスセンサーや超音波センサーは,それぞれ赤外線パターン光や超音波を対象物に照射して距離を測るため,数10m以上の長距離の対象物の測定が困難になる。

ミリ波レーダーやLiDARは,装置コストが高く,また小型化が難しい。SfM技術は,カメラを動かしながら撮影した複数枚の画像から対象物の距離を測定するため,動きのある対象物の距離を高精度に検出することが困難となる。

このように,従来の様々な距離センサーはそれぞれ一長一短あり,小型・低コストで高精度に距離を取得することが困難だった。

同社は,独自のカラーフィルタと画像処理の組み合わせにより,単眼カメラで撮影した1枚の画像から,カラー画像と高精度な距離画像が得られる独自の撮像技術を開発した。

レンズ開口部に,水色と黄色のカラーフィルタからなる独自のカラー開口フィルタを取り付けることで,物体までの距離に応じたボケと色ズレが発生する。撮影された1枚の画像から得られるボケと色ズレを画像解析することで,物体までの距離が画素毎に検出可能となるとしている。

このカラーフィルタは,明るさへの寄与率が高い緑色の光を透過させるため,撮像した画像の画質劣化も抑えられる。市販カメラを用いた試作により,カメラ間距離35cmのステレオカメラ並みの距離精度が,単眼カメラで撮影した1枚の画像から得られることを確認したという。

この方式は,レンズと画像処理で構成されるため,一般的な安価なイメージセンサを利用して構成することが可能。同社では今後,カメラの小型化および画像処理の高速化を行ない,早期の実用化を目指す。

関連記事「三菱電機,レーザーで測定「路面性状計測車両」を発売」「ソニー,距離画像センサー技術のベルギー企業を買収」「【モーターショー】パイオニア,開発中のLiDARなど展示