東工大ら,広い温度範囲でマヨラナ粒子の創発を発見

東京工業大学と東京大学,英ケンブリッジ大学,独マックスプランク研究所はともに,量子スピン液体を示す理論模型に対して大規模数値計算を駆使することで,磁気ラマン散乱強度の温度変化が,幻の「マヨラナ粒子」を色濃く反映することを見出した(ニュースリリース)。

この結果は,磁性絶縁体の基本構成要素である電子スピンがより小さな単位へと分裂する「分数化」という現象が,広い温度領域にわたって生じていることを意味する。

さらに,この理論計算の結果が,カナダと米国の共同研究によって得られていた磁性絶縁体の塩化ルテニウムに対する実験結果と非常に良い一致を示すことを見出した。

このことは,電子スピンの分数化によって創発されたマヨラナ粒子が,現実の物質中で室温程度まで存在することを強く示唆するもの。

この研究で提案する創発マヨラナ粒子による量子スピン液体の実証方法は,低温極限にのみ着目してきた従来のものとは一線を画すものであり,他の量子スピン液体への応用が期待されるという。

また,この幻の粒子を追い求めてきた素粒子物理学や量子情報などの周辺分野にも大きな波及効果をもたらすものだとしている。

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