理研,世界最高効率の深紫外LEDを実現 ー水銀ランプに迫る効率~20%を達成ー

※2017年5月17日 タイトルに誤りがあったので修正しました
理化学研究所(理研)の研究グループは,殺菌用の深紫外LEDを従来の5倍程度高効率化することに成功した(ニュースリリース)。

波長200~350nmの光を発光する深紫外LEDは,殺菌・浄水,空気清浄をはじめ,医療,樹脂硬化形成・接着,印刷など非常に広い応用分野での利用が期待されている。しかし,これまでの深紫外LEDは,LED内部で発光した光を外部に取り出す効率(光取り出し効率)が低いため高効率動作が難しく,普及が進んでいなかった。

光取り出し効率は,①LEDのコンタクト層によって紫外光の多くが吸収される,②電極で紫外光が吸収される,③素子内の内部反射で光が外に出にくいという三つの影響で大幅に低減されている。


今回,研究グループは,加工サファイア基板(PSS)上に高品質な窒化アルミニウム(AlN)テンプレート層を有機金属気相成長法(MOCVO法)により結晶成長させ,さらにその上にn型窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層,発光層,電子ブロック層,p型AlGaNコンタクト層を製膜し,高反射特性を持つロジウム(Rh)電極をp型電極として形成しLED構造を作製した。

従来型深紫外LEDでは,p型窒化ガリウム(GaN)コンタクト層が紫外光を吸収するため,これを紫外光に対して透明なp型AlGaNコンタクト層に変更した。また,従来型のニッケル/金(Ni/Au)電極を高反射Rh電極に変更することで,電極反射率を約2.5倍に向上させた。またPSS上に素子を形成することで,光散乱効果の高い光取り出し効率を実現した。

その結果,光取り出し効率が大幅に向上され,外部量子効率は殺菌用途に最適な275nm付近の波長において,これまでの4.3%から20.3%という世界最高の効率動作に達した。この値は,現在殺菌灯として用いられている低圧水銀ランプの効率(約20%)に迫るもの。

今後,この手法による高効率な深紫外LEDが実現すれば,殺菌・浄水,空気清浄のみならず,皮膚治療などへの医療用途や,農作物の病害防止などの農業,紫外線硬化を用いた樹脂形成,紫外接着,3Dプリンター,印刷・塗装,コーティング,各種計測など幅広い応用分野での普及が期待できるとしている。

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