住友電工、車内ネットワーク向けガラス製光ファイバおよびトランシーバを開発

 

近年の自動車は,車載カメラをはじめとする各種センサが安全装備として搭載されるようになっている。また車内では映像やゲームも楽しめるようになるなど,車内ネットワークの充実が求められている。しかし,現在国内の自動車メーカが採用しているCAN(Controller Area Network)と呼ばれる通信規格は,もともとデバイスの制御を目的としているものであることから,通信速度は最大1Mb/sであり,音声や映像といったエンターテイメント用途には少々厳しいというのが実情だ。

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これに対し,欧州では車内エンターテイメントに向けて開発された通信規格としてCANより高速なMOST(Media Oriented Systems Transport)の採用が進んでいる。物理層にツイストペアケーブル等の電線を用いるCANに対し,MOSTはプラスチックファイバ(POF)を用いた光通信を用い,通信速度は25Mb/sと高速化されており,最大150Mb/sまで拡張する。しかしコストの問題から国内ではあまり採用は進んでおらず,例えばトヨタでは電線を用いて50Mb/s を実現する「MOST50」を使用している(詳細は省くが,他にも「FlexRay」や「IDB-1394」といった通信規格が欧州を中心に策定されている)。

従来の電線を用いた通信もあの手この手と頑張ってきてはいるが,車内に張り巡らされる電線の重量や,そこから発せられる電磁波の問題も既に無視できないレベルになってきている。さらに今後は自動車の安全装備のさらなる充実,その先には自動運転化なども見えてきており,車内ネットワークもイノベーションが迫られている。

住友電気工業は,車載ネットワーク(車載LAN)向けガラス製光ファイバケーブルおよび,コネクタ,トランシーバの開発を行なってきている。ガラス製ファイバはPOFに対して高速通信が可能で,現在1Gb/sタイプを公表している。ガラス製ファイバの弱点であった曲げ性能はΦ7.5mmに対応しており,取り回しの厳しい車内でも取り扱えるようにした。動作温度は-40~105℃となっている。

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今回開発した1Gb/sトランシーバは,耐久試験や評価を終えており,すぐにでも製品化できるという。またファイバ自体は10Gb/sの帯域を持っていることから,今後は5Gb/sタイプのトランシーバを開発するとしている。

この車載LANが適応するプロトコルはMOST(150Mb/s),MOST Next Generation(1~5Gb/s:2018年策定予定),GbE(1G,10G),IDB-1394(1G)など。エンターテイメント向けにはコピープロテクトの問題があるものの,今後は車載ネットワークにもGbEが採用される可能性が高いとも言われており,現行のPOFに比べて帯域に余裕がある同社のLANに,今後注目が集まるだろう。