東大、自然免疫における核酸センサーTLR8のリガンド認識および活性化機構の解明

東京大学大学院薬学系研究科教授の清水敏之氏、助教の大戸梅治氏、同大薬学部学生 丹治裕美氏および東京大学医科学研究所教授の三宅健介氏、特任助教の柴田琢磨氏の研究グループは、ウイルスの侵入を感知して免疫系を活性化するTLR8受容体の詳細な三次元構造を世界で初めて解明した。

細菌やウイルスなどの病原体に対する防御機構として、我々の体には自然免疫機構が備わっており、TLR受容体などのレセプター群が病原体の感知を担っている。今回構造を明らかにしたTLR8は、TLR7とともにウイルス由来の一本鎖RNAを認識する受容体であり、炎症、抗ウイルス応答を引き起こす。また、TLR7/8は、合成低分子化合物によっても活性化されることが知られており、これらのTLR7/8を活性化または阻害する化合物は、抗ウイルス薬、がんに対する治療薬として実際に使われています。しかし、これまで、TLR7/8がどのようにしてRNAまたはこれらの低分子化合物により活性化され細胞内へ情報を伝えるのかについての具体的な機構は不明であり、リガンドの結合位置・認識機構もまったくわかっておらず薬物設計の指針をたてることは困難だった。

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TLR8のリガンド結合部位の拡大図

今回、研究グループは、リガンド非結合型およびリガンド結合型TLR8の詳細な三次元構造を明らかにした。その結果、リガンド非結合型および結合型TLR8は、いずれも2量体として存在していること、リガンドと結合することでTLR8のC末端側が近接するように2量体が再構成されることが分かった。これにより細胞内へシグナルが伝えられるものと考えられる。また詳細なリガンド認識機構も明らかになった。

本研究の成果は、TLR8をターゲットとした抗ウイルス薬、がん免疫賦活剤などの開発につながることが期待される。

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