原研、低温の電子状態を高温で出現させることに成功

日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター重元素系固体物理研究グループグループリーダーの神戸振作氏は、フランス原子力庁(CEA)グルノーブル研究所の青木大氏、Jacques Flouquet氏らと共同で、ウラン化合物超伝導体(URu2Si2)を17.5K以下の極低温に冷却した際に出現する電子状態を、結晶に力を加えてひずませることで、より高温で出現させることに成功した。

物質は、温度や圧力などの外部要因によって、例えば「固体」「液体」「気体」に見られるように様々な「状態」をとり、また、同じ固体であってもさらにその結晶構造などが変化していることがある。このような異なる状態においては、原子や分子の並び方、電子の在り様などが変化している。

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ウラン化合物超伝導体(URu2Si2)には、極低温のある領域で長年解明されていない未知の状態をとる。近年、この未知の状態への転移に伴い結晶格子は4回対称を保ちながら、電子状態のみが4回対称から2回対称に変化することがわかった。今回の研究では、物体に一方向からのみ力を与えて結晶格子を4回対称から2回対称にするひずみを人工的につくりだすことで、電子系の2回対称状態をより高温で出現させることに成功。また、結晶格子をひずませる圧力と電子系が2回対称に変化する温度に相関関係があることを見出した。これは、未知の状態が、電子系のみならず、結晶格子の回転対称性とも強く関係していることを示している。

今回の成果により未解明の低温状態の理解に大きな進展が期待される。

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