北大、女性特有の“働かない”X 染色体の仕組みを解明

北海道大学大学院先端生命科学研究院教授の小布施力史氏らは,体の中で働く膨大な種類の物質から,女性の不活性化の X 染色体を小さく折りたたんでいる目的のタンパク質を見い出すことに成功した。

性決定を担う性染色体は男性がXY,女性がXX の組み合わせからなる。男性よりもX 染色体を1 本多く持つ女性の場合,どちらか1 本の働きが休止状態でなければ,生存できないことがわかっている。この“働いていないほう”のX 染色体,すなわち不活性のX 染色体は小さく折りたたまれて凝縮した「バー小体」として「読み取られない」形で細胞の核内に観察されるが,具体的な構造や詳細はわかっていなかった。

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バー小体は「ヘテロクロマチン」といわれる構造をとっている。このヘテロクロマチンを構成するタンパク質 HP1 に結合するタンパク質の種類を,質量分析器を用いたプロテオミクスという手法で特定していき,さらに,分子イメージングや膨大なヒトの遺伝情報を 3 日間で解読できる次世代シーケンサーを使って,これらのタンパク質の働きを解明した。

こうして発見したタンパク質 HBiX1 が他のタンパク質やRNA と連携し,ヘテロクロマチン構造を形成していること,これらのタンパク質の働きを阻止するとヘテロクロマチン構造自体が消滅することを明らかにした。

凝縮した染色体構造は,女性の X 染色体のうち1 本分の遺伝子を読み取られないようにするだけでなく,ヒトの発生や分化に関わる遺伝情報の読み取りを緻密に抑制し,細胞間の違いを生み出す遺伝子の発現パターンを規定していると考えられている。

例えば,皮膚の細胞ならば皮膚の形質に関わる遺伝子以外は読み取られないように,凝縮することで遺伝子の読み取りを抑える仕組みが活用されている。そのため凝縮した染色体構造が正しく作られないと,様々な疾患が引き起こされると考えられる。

また,HBiX1 などのタンパク質は,X 染色体以外の染色体にも存在することから,染色体上の様々な領域の凝縮に関わっていることが示唆される。これらのタンパク質の働きを人為的に操作することで,細胞の性質を容易に改変できる方法に発展する可能性があると期待され,同じ染色体を3 本持つトリソミーによる遺伝的な障害の緩和や,このタンパク質が関係していると言われる,ある種の筋ジストロフィーの発症やがんの治療にも期待できる。

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