NAIST,病原菌に対する植物の免疫スイッチがONになる瞬間の可視化に成功

奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科 植物分子遺伝学研究室教授の島本功氏,同研究員 赤松明氏らの研究グループは,イネを使って,植物の免疫システムがONになる瞬間を可視化し,そのメカニズムを世界に先駆けて発見した。

研究グループは,まずRaichu-OsRac1(ライチュー・OsRac1)という蛍光タンパク質の光る性質を利用して反応を追跡できる生体内センサを用いた解析から,OsRac1がイネの細胞膜上で活性化されることを視覚的にとらえることに成功した。この解析によって,免疫スイッチは病原菌侵入後3分以内に細胞膜上でONになることが明らかとなった。

またOsRac1に結合するOsRacGEF1と呼ばれる病原菌の目印になるタンパク質を同定し,このOsRacGEF1の発現を抑制したイネにいもち病菌を感染させると,そのイネはいもち病に対して抵抗性が弱くなることがわかった。このことからOsRacGEF1は植物免疫において重要な因子であることがわかった。

さらに,OsRacGEF1は,病原菌が持つキチン糖を認識するイネのキナーゼ型免疫受容体OsCERK1にも結合することを発見。これらのことなどから,受容体からの指令は,OsRacGEF1を介してOsRac1まで伝えられていることが明らかになった。つまり,イネの細胞膜上では普段からOsCERK1-OsRacGEF1-OsRac1タンパク質が待機しており,病原菌を感知後,即座にOsRac1タンパク質のスイッチをONにすることができると考えられる。

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この発見により,耐病性誘導の分子機構の理解を進め,作物生産やバイオ燃料の開発の安定化に大きく貢献できるものと考えられる。

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