理研、魚が記憶に基づいて意思決定を行う時の脳の神経活動を可視化

理化学研究所脳科学総合研究センター発生遺伝子制御研究チーム研究員の青木田鶴氏、チームリーダーの岡本仁氏らによるは、小型熱帯魚のゼブラフィッシュを用いて、魚が特定の行動を行おうと意思を決定する時に、大脳皮質に相当する領域の特定の神経細胞群によって保存されている行動プログラムが読み出される過程を可視化することに成功した。

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研究チームは、2つの部屋に分かれた水槽の中でゼブラフィッシュに赤色ランプを提示し、反対側の部屋に逃げなければ軽い電気ショックを与えるという試行を繰り返して回避行動を学習させた。次に、蛍光タンパク質の蛍光強度の変化で神経活動を計測する「カルシウムイメージング法」を用いて、回避行動のプログラムを思い出している最中の脳の神経活動を計測した。

その結果、学習成立から長時間(24時間)経過した個体だけ大脳皮質に相当する領域にスポット状の神経活動パターンが観察された。これは、長期的に記憶された回避行動のプログラムが読み出される過程の可視化に成功したことになる。この大脳皮質相当領域を回避学習する前に破壊すると、学習する能力や学習した行動を30分程度の短い期間で思い出す能力(短期記憶)には影響はないが、24時間以上経過した場合(長期記憶)学習した回避行動を思い出せなくなることが分かった。

この結果から、同領域の神経細胞は長期的な行動プログラムの記憶に関わり、この行動プログラムが読み出されて魚が適切な行動を選択することが示された。さらに、前述した学習ルールに加え、もう1つ異なるルールを学習させて、それらの行動プログラムを思い出している最中の脳の神経活動を観察したところ、異なる神経細胞群の活動パターンによって読み出されることが明らかになった。

脊椎動物の原型であるゼブラフィッシュをモデルにした今回の成果によって、ヒトを含む動物の行動プログラムが脳でどのように書き込まれ、保存され、読み出されて、意思決定がなされるのかを明らかにする研究が飛躍的に進むことが期待できる。

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