横市大、筋肉の障害、筋力低下をきたす『先天性ミオパチー』の新たな原因遺伝子を発見

横浜市立大学学術院医学群特任助手の宮武聡子氏、研究員の輿水江里子氏、准教授の三宅紀子氏、教授(遺伝学教室)の松本直通氏らは、先天性ミオパチーの一型である、ネマリンミオパチーの新たな疾患責任遺伝子を発見した。

ネマリンミオパチーは先天性ミオパチーの中で頻度の高い疾患である。筋肉の収縮に関係する構造タンパク質が壊れるため、全身の筋力低下をきたし、ネマリン小体と呼ばれる凝集体が筋線維内に出現する。これまでいくつかの疾患の原因となる遺伝子が特定されてきたが、常染色体劣性遺伝形式をとり、胎児期より寡動・羊水過多など来たし、出生後も呼吸不全・嚥下困難などの最重症の経過をとる重症ネマリンミオパチーの一群については、その原因は明らかではなかった。

130611yokoichi1

松本氏らのグループは、全エクソーム解析という新しい研究手法を応用し、KLHL40遺伝子の複合ヘテロ接合性変異を発見。その後日本、アメリカ、フィンランド、オーストラリア合同国際研究を展開し、重症ネマリンミオパチーの143家系の解析で28家系(19.6%)に本遺伝子変異がみつかったことから、この遺伝子の変異が多民族にわたり重症ネマリンミオパチーの高頻度の原因となっていることをつきとめた。日本人では、特定の創始者変異が存在するため、本遺伝子変異の検出率は重症ネマリンミオパチーの47家系中13家系(28%)とさらに高頻度に見られることがわかった。

KLHL40遺伝子によって作られるタンパク質は筋肉の収縮に関係する構造タンパク質の1種。本遺伝子に変異を持つ患者では、このタンパク質が筋線維内でほとんど消失していた。またこのタンパク質はこれまで知られているネマリンミオパチー関連タンパク質とは異なる局在を示すことがわかり、新規の分子病態を有することが示唆される。

小型脊椎動物のゼブラフィッシュにおいても筋肉前駆細胞や骨格筋で本遺伝子が発現していることを確認し、モルフォリノアンチセンスオリゴによって遺伝子機能を阻害すると、筋線維の構造異常が起こり、患者の病態が再現された。

本研究は、日本における重症先天性ミオパチーの早期診断、早期の適切な治療介入に貢献できる可能性がある。またその病態解明が進めば、ネマリンミオパチーに対する新しい治療法の開発にも寄与することが期待される。

詳しくはこちら