総合研究大学院大学ら,日本人のルーツを遺伝子から解明

国立遺伝学研究所集団遺伝研究部門教授の斎藤成也氏,東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学専攻分野教授の徳永勝士氏,東京大学大学院理学系研究科・理学部名誉教授の尾本惠市氏を中心とする研究グループは,日本列島人(アイヌ人,琉球人,本土人)のゲノム解析により,現代日本列島人は,縄文人の系統と,弥生系渡来人の系統の混血であることを支持する結果を得た。

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これまでの遺伝学的研究では,アイヌ人と沖縄人の近縁性を支持する結果はいくつか得られていたが,決定的なものではなかった。今回,研究グループは,ヒトゲノム中のSNP(単一塩基多型)を示す100万塩基サイトを一挙に調べることができるシステムを用いて,アイヌ人36個体分,琉球人35個体分を含む日本列島人のDNA分析を行なった。

その結果,アイヌ人からみると琉球人が遺伝的にもっとも近縁であり,両者の中間に位置する本土人は,琉球人に次いでアイヌ人に近いことが示された。一方,本土人は集団としては韓国人と同じクラスターに属することも分かった。さらに,他の30人類集団のデータとの比較より日本列島人の特異性が示された。

このことは,現代日本列島には旧石器時代から日本列島に住む縄文人の系統と弥生系渡来人の系統が共存するという,二重構造説を強く支持する。また,アイヌ人はさらに別の第三の系統(ニブヒなどのオホーツク沿岸居住民)との遺伝子交流があり,本土人との混血と第三の系統との混血が共存するために個体間の多様性がきわめて大きいこともわかった。

日本列島における人類集団の遺伝的多様性を明確にすることは,人類学的観点のみならず,ゲノム医学にとっても大きな意義がある。将来は,これら集団間の表現型の違いとゲノムの違いを結びつけることが期待される。

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