理研とマギル大、鉄を用いた安価で効率のよい水素化触媒を開発

理化学研究所とマギル大学(カナダ)は、鉄を用いた新しい水素化触媒を開発し、石油化学品製造において極めて重要な水素化反応を1分以内で進行させることに成功した。

日本の石油化学品製造にはさまざまな触媒が用いられ、なかでも水素化触媒が最も多く使用されている。水素化触媒により、石油化学品の基礎原料、中間体、各種石油化学製品が幅広く製造されているが、現状ではパラジウムが一般的に使われている。しかし、パラジウムは地金価格が1kg当たりで100万円以上する高価なレアメタル。こうした背景から、日本の石油化学品製造分野では、レアメタル使用から脱却し、安価でかつ効率のよい触媒を開発することが研究課題になっている。

130628riken1

共同研究グループは、地金価格が1kgで100円以下と、安価で豊富にある金属の鉄を用いた触媒開発を検討した。その結果、水にも有機化合物にも親和性のあるポリスチレン-ポリエチレングリコール樹脂にナノ化した鉄粒子を付着することで、水素化反応を可能とする触媒の開発に成功した。

実際に、この触媒をフロー型反応装置で水素化反応をさせたところ、従来に比べて数百分の1に当たる1分という短時間で反応が進行した。さらに、従来の触媒で問題となっていた、酸素や水による触媒活性の低下がなかった。また、エタノールやエタノール水混合溶媒のような毒性の低いアルコールを反応溶媒に用いることも可能になり、安全性が向上した。

現在は基礎研究段階だが、将来、大規模な処理装置が開発されると、レアメタルを用いない水素化反応を効率的に行える化学プラントが実現すると期待できる。

詳しくはこちら