東大、アンチセンス核酸を筋肉細胞に導入して筋強直性ジストロフィーの症状を改善することに成功

東京大学大学院総合文化研究科大学院生の古戎道典氏と教授の石浦章一氏らは、塩化物イオンチャネル遺伝子CLCN1のスプライシングを正常化する効率の良いアンチセンス核酸を同定し、それをバブルリポソームと超音波を用いて筋細胞に導入する新しい治療法を確立した。

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筋強直性ジストロフィー1型は、いくつかの症状が遺伝子からmRNAが作られる過程の「スプライシング」という反応の異常な制御によって引き起こされることが知られている。スプライシングの異常な制御を改善することは、筋強直性ジストロフィー1型の症状緩和につながるため、現在まで様々なスプライシングの改善方法が試みられてきた。

研究グループは、バブルリポソームと超音波を用いたアンチセンス核酸のデリバリー法により、筋強直の原因となるCLCN1の異常なスプライシングを正常化する新しい方法を開発した。まず、研究グループは、特定の配列を持つアンチセンス核酸がマウスのCLCN1の正常型スプライシングを効率よく促進することを発見した。次に、アンチセンス核酸を効率よく筋肉細胞に導入する方法として、バブルリポソームと超音波を用いた。

バブルリポソームとは、脂質の膜であるリポソームに超音波造影剤であるパーフルオロプロパンガスを封入したもので、言わば、超音波造影剤の小さな泡である(東京薬科大学の根岸洋一准教授との共同研究)。このバブルリポソームとアンチセンス核酸の混合溶液をマウスの筋肉に注射し、筋肉に外から超音波を照射すると、バブルリポソームが筋組織内ではじけ、その衝撃で筋細胞膜に小孔が開く。この小孔により、理論的にはアンチセンス核酸を細胞内に導入できる。

研究では、バブルリポソームと超音波を用いてマウスの筋細胞にアンチセンス核酸を導入することにより、筋強直性ジストロフィー1型モデルマウスのCLCN1のエキソン・スキップに成功し、筋強直症状の改善が観察された。

今後は、開発したデリバリー法のヒト細胞での効果を確認することで、筋強直性ジストロフィー1型の筋強直症状を緩和する薬剤の開発へと繋がることが期待される。

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