理研、脱髄を進行させる糖鎖を発見

理化学研究所は、脳に発現する糖転移酵素「N-アセチルグルコサミン転移酵素IX (GnT-IX) 」が作る分岐型O-マンノース糖鎖が脱髄を進行させることを発見し、この糖鎖が多発性硬化症をはじめとする脱髄疾患治療のための新たなターゲットになる可能性を示した。

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脱髄疾患は、神経を覆っているミエリンが消失し(脱ミエリン化)、神経信号がうまく伝達できなくなるため、四肢のしびれなどさまざまの神経症状が出る原因不明の難病。病気の進行には脳内に存在するアストロサイトなどの細胞の活性化が関わっている。

研究グループは、2003年に自らが発見した糖転移酵素GnT-IXが作る分岐型O-マンノース糖鎖に着目し、まずGnT-IXを欠損させた「GnT-IX欠損マウス」を作製した。次に野生型マウスとGnT-IX欠損マウスそれぞれにクプリゾンを投与し、人為的に脱髄を進行させて両者を比較、解析した。

その結果、クプリゾン投与により野生型は脱髄が進行したのに対し、GnT-IX欠損マウスは脱髄が軽症化し、再ミエリン化が促進された。さらに、細胞レベルで解析した結果、分岐型O-マンノース糖鎖は主に活性化アストロサイトに発現しており、野生型ではアストロサイトの活性化が強く起っていたのに対し、GnT-IX欠損マウスでは活性化が抑制されることが分かった。

今回の研究成果に加え、GnT-IX欠損マウスが通常の飼育条件で正常に発育することを考えると、GnT-IX阻害剤が脱髄疾患の新たな治療薬候補になると期待できる。

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