パナソニック,新構造の光触媒粒子による水浄化技術を開発

パナソニックは,ゼオライトという回収しやすい大きさの粒子の表面に,微粉末の二酸化チタン光触媒を結合させた新構造の光触媒粒子を開発,この光触媒粒子を水中に分散して高速処理が可能な水浄化技術を開発した。これまで,沈降分離で回収しやすい大きさの粒子の表面に,ゾルゲル法で光触媒の薄膜を形成する方法は提案されていたが,微粉末の二酸化チタン光触媒の活性には遠く及ばなかった。

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この光触媒粒は,従来の固定型光触媒に比べ最大100倍の反応速度で,地下水などに含まれるヒ素や六価クロムなどの有害金属や難分解性有機物を無毒化することが出来る。さらに,従来の光触媒粒子では困難であった処理水中から使用済み光触媒の回収と再利用が容易になる。これにより,太陽光を利用した小規模の独立型水浄化装置が実現され,安全で低コストの飲料水が求められる新興国等への展開が期待される。

光触媒粒子は,特定の粒子間に作用する静電的な引力を結合力として利用しているため,結合剤などの化学物質は不要。この結果,ゼオライトの表面に結合された微粉末の二酸化チタン光触媒は,本来有する光触媒活性を失うことがなく,3価ヒ素や難分解性有機物の光触媒酸化反応において,微粉末の二酸化チタン光触媒と同等の光触媒活性を示す。

微粉末の二酸化チタン光触媒はゼオライトの表面に弱く結合している。この新構造の光触媒粒子を含む水溶液をかくはんすると,微粉末の二酸化チタン光触媒は水溶液の中に分散していく。かくはんを止めると,微粉末の二酸化チタン光触媒はゼオライトの表面に再結合し新構造の光触媒粒子を形成する。この粒子形成の結果,新構造の光触媒粒子は容器の底に沈殿し,容易に水から分離することができる。

主な特長として,以下がある。

  • 新構造の光触媒粒子はミクロンオーダーの大きさの粒子のため,沈降分離が容易で,水中に分散した光触媒を短時間で回収し再利用が可能。
  • 上記光触媒粒子は,光と反応して有害物質を無毒化する光触媒の表面積を格段に大きくできるため,固定型光触媒による水浄化と比べ,処理速度を難分解性有機物なら100倍,ヒ素なら50倍に高めることが出来る。
  • 本触媒による水浄化は,光触媒と太陽光に含まれる紫外線のみなので,低コストで環境負荷のないシステムとなる。

この技術によって,地下水などに含まれ除去が難しかった有害金属などを最大99.99%無毒化できるため,従来困難であった地下水源を,新たな飲料水源として活用できる。また光触媒と太陽光に含まれる紫外線のみで水を浄化するため,塩素や薬剤などを利用する方法と比較し環境負荷もない。この開発内容の一部は,インドのジャダプール大学との産学連携プロジェクトにて水浄化システムの効果を10月より実証していく予定。

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