長崎大、神経難病HAMの新しい治療法を開発

長崎大学大学院准教授(感染免疫学)の中村龍文氏らは、HTLV-I関連脊髄症(HAM)に対する新しい治療法としてのビタミンB1製剤 プロスルチアミン(商品名アリナミン)療法の有効性を発表した。

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HAMは厚生労働省指定の神経難病で、疫学調査で患者は全国で約3000人と推定されている。その中でもHTLV-I感染者が多い九州に多発している疾患。

臨床的には両下肢運動機能障害と排尿・排便障害が主症状。この疾患に対して副腎皮質ホルモン剤やインターフェロンーαによる治療法がとられているが、その効果は不十分であり、長期投与における副作用の出現など多くの問題点がある。一旦発症すれば確実に進行性である本疾患に対して安全で新しい治療法の開発が切望されているのが現状。

研究グループはプロスルチアミンに抗HTLV-I効果があることを突き止め、このことをもとにHAM患者男女計24人を対象に臨床研究を実施した。プロスルチアミン経口薬投与を1日1回、12週間続けた結果、下肢のつっぱりの症状が軽減し、歩行時間や階段を降りる時間が短縮し、下肢運動機能の改善がみられた。また、排尿機能については、膀胱容量の増大と排尿筋圧の上昇、そして排尿筋過活動が消失するなどの改善がみられた。末梢血HTLV-Iプリウイルス量は平均で約15%減少。半減した患者も数人いた。投与中に重篤な副作用はなかった。

臨床研究によりプロスルチアミン療法の有効性と安全性が検証され、本薬剤は有効なHAM治療薬となる可能性が高く、今後は薬事承認に向けた臨床試験が必要である。

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